無職とは文字通り、「職業を持たない人」のことを指しますが、現在日本における無職の割合や人数はどれくらいなのでしょうか?

また関連して「ニート」という言葉がありますが、無職とニートに違いがあるのでしょうか?さらに無職になる人に共通点は見られるのでしょうか?

ここでは日本における無職の現状についてまとめました。

無職の人数

まず無職の人数を「完全失業者数」と「非労働力人口」の合算値とし、無職の人数を算出しました。(ちなみに、「完全失業者数」とは現在は就職しておらず、就職活動をしている人数のことで、「非労働力人口」とは学生や家事や高齢者の人数とのことです。※どちらも15歳以上の人を指します。)
参考:労働力調査(基本集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果の要約,概要,統計表等(【用語の解説】)

完全失業者数は190万人

まず2017年は完全失業者数は190万人で、非労働力人口は4,382万人であり、合算すると約4,572万人でした。厳密に言うと無職者の中には非労働力人口、つまり定年退職をした高齢者や学生も含まれるため、実は日本の人口の半数弱が無職者に分類されています。

また近年の無職者数の推移は下記のとおりです。

無職者の人数の推移

年/人数(万人) 完全失業者 非労働力人口 合計
2011 302 4,518 4,820
2012 285 4,543 4,828
2013 265 4,510 4,775
2014 236 4,494 4,730
2015 222 4,479 4,701
2016 208 4,432 4,640
2017 190 4,382 4,572

参考:労働力調査(基本集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果の要約,概要,統計表等(P,4,11)

なんと、完全失業者数については2011年以降、非労働力人口については2013年以降、人数が減っていることが分かりました。また2017年に関しては、前年と比べて計68万人減少していました。

内訳を見ていくと、完全失業者数に関してはリーマンショック後の影響が落ち着いたようで、完全失業者数の増加がストップしました。

非労働力人口については女性の人数が年々減っていることが分かっています。これは女性の活躍推進により、非労働力人口に含まれる専業主婦の人数が減っていることが要因の1つです。

ニートの人数

まずニートと無職は混合して使われることが多いのですが、ニートは無職の中に包含されています。ニートの定義は「15~34歳までの就職、勉学、家事をしていない者」となっています。

ニートも無職であることには変わりありませんが、年齢的が15~34歳までと制限があり、統計では「若年無業者」と言われています。また学生や主婦は「非労働力人口」として無職には含まれるものの、ニートには学生や主婦が含まれません。(詳しくは「ニート・無職・フリーターの違い」の記事でもそれぞれの定義や社会的信用度の違いを解説しています。)

さてニートの人数ですが、2017年は約54万人いることが分かっています。またニートの人数の推移は下記のとおり、同じく年々減少しています

ニートの人数の推移

人数(万人)
2011 61
2012 63
2013 60
2014 56
2015 56
2016 56
2017 54

参考:労働力調査(基本集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果(P,15)

※当調査では、ニートのことを「若年無業者」と呼称している。

※なお、ニートの年齢構成は20代後半と30代前半が一番多くなっており、年々年齢構成が上がってきています。詳しいニートの人数の現状については「ニートの人数」の記事でも解説しています。

無職の割合

さて人口に占める無職の割合はどうなっているのでしょうか?先ほどと同様、無職そのものの割合は統計化されていないため、「完全失業者」および「非労働力人口」およびの割合を見ていきます。

まず「完全失業者数」の割合(完全失業率)は下記のとおりです。

完全失業者の割合の推移

割合(%)
2011 4.6
2012 4.3
2013 4
2014 3.6
2015 3.4
2016 3.1
2017 2.8

参考:労働力調査(基本集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果の要約,概要,統計表等(P,12)

完全失業者の割合ですが年々右肩下がりとなっています。景気の回復に伴い、2010年代に関しては失業率が低下しているようです。

また全年齢人口に占める無職者である「非労働力人口」の割合は下記のとおりです。

非労働力人口の割合の推移

割合(%)
2011 40.6
2012 40.7
2013 40.6
2014 40.5
2015 40.3
2016 39.9
2017 39.4

参考:労働力調査(基本集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果の要約,概要,統計表等(P,2,4)

少しずつですが、非労働力人口の割合は人数同様に減少しています

ニートの割合

ちなみにニートの割合についても算出してみました。2017年は2.1%であり、ここ数年は2%台前半となっています。

ニートの人数比率の推移

割合(%)
2011 2.2
2012 2.3
2013 2.2
2014 2.1
2015 2.1
2016 2.2
2017 2.1

参考:労働力調査(基本集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果(P,15)

ニートの人数は減っていますが、割合はさほど変わっていません。非労働力人口や完全失業者の割合は減っていることと比べると顕著な特徴と言えます。

無職者数は減っているにも関わらず、相変わらずニートの問題は表面化したままなのです。

20代、30代の割合

さてニートの年齢にも含まれる20代、30代の無職者の割合にクローズアップするとどのような特徴が見られるのでしょうか?

ここでは20代、30代それぞれの割合を見ていきます。はじめに「完全失業者」の割合を算出してみました。

年代別完全失業者の割合の推移

年/年代 15~24歳 25~34歳 35~44歳
2011 8.2 5.8 4.1
2012 8.1 5.5 4.1
2013 6.9 5.3 3.8
2014 6.3 4.6 3.4
2015 5.5 4.6 3.1
2016 5.1 4.3 2.9
2017 4.6 3.7 2.6

参考:労働力調査(基本集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果の要約,概要,統計表等(P,12)

当調査では年代を15~ 24歳、25~ 34歳、35~ 44歳に分類しているために推測にはなりますが、2017年の20代の完全失業者の割合は約4.2%、30代の割合は約3.2%と言えそうです

また10代後半から20代前半の完全失業率がどの年も高くなっています。若者の失業率の高さは長年問題となっています。早期退職者の募集や中高年層のリストラが注目されていますが、それはそもそも若年層に比べて中高年の雇用が重視されてきたの証なのかもしれません。

次に非労働力人口の年齢別の割合を算出しました。

年代別非労働力人口の割合の推移

年/年代 15~24歳 25~34歳 35~44歳
2011 58 16.3 17
2012 58.3 16 16.8
2013 57.6 15.2 16
2014 57.4 15 15.3
2015 57.4 14.8 14.9
2016 55.7 13.8 14.7
2017 55.3 13.2 14

参考:労働力調査(基本集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果の要約,概要,統計表等(P,2,4)
※年代別の全人口に占める非労働力人口の割合を算出。

上記統計では、年代を15~ 24歳、25~ 34歳、35~ 44歳に分類しているために推測にはなりますが、2017年の20代の非労働力人口の割合は約34%、30代の割合は約13%と言えそうです。

無職の定義には学生も含まれることから、20代の割合は30代の3倍ほどあることが予想されます。

ここまで年代別の完全失業者や非労働力人口の割合について見てきました。割合についてまとめると、20代の割合が30代に比べて高くなっており、またニートの中心の年代でもある20代の雇用状況は厳しいことが分かります。

大卒、高卒の無職の割合

ちなみに最終学歴によって割合に変化はみられるのでしょうか?無職者の学歴構成を示す統計結果がなかったため、ここでは2012年の結果になりますが、卒業後の進路が無職(ニート)と回答した人の割合を見ていきます。

卒業後の進路が無職である割合の推移

年/学歴 高卒 大卒
2009 5.1 12.1
2010 5.6 16.1
2011 5.4 15.9
2012 4.9 15.5
2013 4.9 13.6
2014 4.5 12.1
2015 4.4 10.3
2016 4.3 8.7
2017 4.7 7.8
2018 5 7

参考:文部科学省 平成30年度学校基本調査(P,4、7)

統計を見てみると、高卒は5%前後、大卒は10%前後、卒業後に定職に就いていないことが分かります。。また10年ほど前は、大卒の割合が高卒の2倍ほどありましたが、ここ数年拮抗してきています。

また高卒者に関しては、大卒者に比べると年による変動が少ないです。一方大卒者に関しては、大学卒業後に正社員に就職した割合が年々高くなっていました。

今後も高学歴になるほど、無職の割合の減少幅が大きいことが予想されます。

※一方でフリーターについては高学歴化が進んでおり、大卒以上の学歴の方が増えています。学歴や年齢別のフリーターの割合の変化を知りたい方は「フリーターの割合について」の記事をご覧ください。

日本と海外の比較

海外と比べたときに日本の無職者の割合は多いのでしょうか?それとも少ないのでしょうか?ここではアメリカと失業率との比較をしてみました。

国別の失業率の推移

年/国 日本 アメリカ
2009 5.1 9.3
2010 5.1 9.6
2011 4.6 9
2012 4.4 8.1
2013 4 7.4
2014 3.6 6.2
2015 3.4 5.3

参考:データブック国際労働比較2017(全文)(P,140)
※各国で公表されている失業率は、 国によって定義が異なるため、国際労働機関が算出した失業率を記載。

両国とも2011年以降は減少しているものの、アメリカの失業率の方が日本よりも高いのですね。

と言うのも、アメリカは日本よりもコストカットのために被雇用者の解雇を簡単に行います。よって一定の失業者数が出てしまうといった背景があります。

また他に失業率が高い国としてはギリシャが挙げられます。2015年のギリシャの失業率は25%で、若者の解雇が相次ぎ、暴動も発生しました。

よって海外と比べると日本にて定職についていない人は実は少なく、日本では何かしらの職業に就いていることが当たり前の状態になっているのかもしれません。

まとめ

今回は無職者やニートの現状について見てきました。現在日本には、無職者(完全失業者数+非労働力人口)については約4572万人、ニートについては約54万人存在していることが分かりました。また無職者数の割合については年々減少しているにも関わらず、ニートの割合はほぼ横ばい傾向にあることが分かりました

つまり働かず家事や勉強もしない若者、いわゆる「ニート」問題が引き続いてしまっていることがうかがえます

どの企業もコスト感覚が厳しくなっている昨今、人件費削減のためのリストラにより、ある日突然止むを得ず無職になってしまうこともあるかもしれません。

さらに最近は景気の回復により求人の数自体は多くなっているものの、ニートの若者にとっては企業が求めるスキルを有していない場合が多く、すぐに次の就職先が見つかることは多くはありません。(無職でいつづけることへのリスクについては「ニート増加の問題点」でも解説しています。)

一般的に働かない期間が長期化すればするほど、次の就職へのハードルが高くなっていきます。現在、ニートでいるけれど、就職をしたいという人は、まずニートであったとしても応募が可能な求人を探すところからはじめてください

その際は、ニートの方向けの求人サイトや、就職支援サイトを活用すると、効率よく自分に合った求人を探すことができます。ニートの方向けの就職支援サイトは、スタッフも現状のあなたの立場を分かった上で求人を探してくれたり、就職までの支援をしてくれます。

繰り返しになりますが、ニートの期間が長期化すると再就職がより難しくなります。よって仕事をしたいと思ったら、迅速に行動に移していきたいものです