ニートが社会問題化されてから久しいですが、現在の日本におけるニートの人数は一体どれくらいなのでしょうか?また人数は年々増えているのでしょうか?それとも減っているのでしょうか?
今回はニート数の推移とニートになった主な要因についても探ります。
ニートの定義からおさらい
“Not in Employment、Education or Training”の頭文字(NEET)をとったもので、15歳から34歳までの就労、就学、家事、職業訓練の何れも行っていない人のことを指します。
ポイントは、労働人口である15歳から34歳までと年齢が限定されており、就労の意思がないということです。
つまり例えばリストラにあい、現在積極的に就職活動を行っている人や、転職先が決まっているものの一時的に働いていないという人はこの定義に当てはまらないということです。あくまでも「現時点では働く意志がなくて、実際に非正規社員としても働いていない人」のことを指します。
ニートの人数の推移
人数の推移
さてここからは本題のニート数の推移を見ていきます。まず人数についてですが、2017年は約54万人でした。
54万人という数字を見ても多いのか少ないのか分かりませんが、2014年~2016年の人数は約56万人であることから、2017年は約2万人減少していることが分かります。
また2013年以前のニート数は60万人台であり、2017年は54万人であったことからだったことから、実は人数は徐々に減少していることが分かります。
年 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 |
数(万人) | 61 | 63 | 60 | 56 | 56 | 56 | 54 |
参考:労働力調査(基本集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果
※当調査では、ニートのことを「若年無業者」と呼称している。
人数比率の推移
次に、若年人口(15歳~34歳)に占めるニートの人数の比率の推移を見ていきます。なぜなら、現在日本の人口も減少しているため、ニートの人数も比例して減少しているだけなのではないかと推測できるからです。
年 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 |
比率 | 2.2 | 2.3 | 2.2 | 2.1 | 2.1 | 2.2 | 2.1 |
参考:労働力調査(基本集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果
上記は人口に占めるニートの人数比率です。ニート数の比率でみても、2017年は2.1%と昨年に比べると0.1%減少していました。
しかしながら、また2011年~2017年にわたって人数比率は2%台を推移をしており、2014年、2015年も2017年と同じく2.1%であったことから、実は比率はさほど減少しておらず、ほぼ横ばいであることが分かります。
つまり人数比率を見てみると、2011年から2017年にかけて全若年労働人口におけるニート数の割合は変わっておらず、引き続き「働かない若者」が一定数存在し、社会問題となりつづけていることが分かります。
年代別内訳の推移
ちなみに、年代別のニート数に変化はあったのでしょうか?ここでは、2011年から2017年までの年代別のニート数の内訳とその推移を見ていきます。
年齢/年 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 |
15~19 | 9 | 9 | 9 | 8 | 8 | 9 | 7 |
20~24 | 15 | 16 | 14 | 13 | 13 | 14 | 14 |
25~29 | 18 | 18 | 17 | 16 | 17 | 16 | 15 |
30~34 | 19 | 18 | 18 | 18 | 17 | 19 | 17 |
※単位:万人
参考:労働力調査(基本集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果
2011年から2017年とおして、ボリュームゾーンは20代後半と30代前半なのですね。ニートに学生は含まれないため、10代後半と20代前半のニート数は少ないのかもしれませんね。
また人数の推移にさほど変化は見られませんでした。人数比率の推移の項目でもお伝えしたように、データだけ見るとニートの現状はここ近年変わっておらず、社会問題化したままなのかもしれません。
※なお年齢だけでなく、最終学歴によってもニートの比率には差があると言われ「高学歴ニート」の比率が上昇しています。学歴毎の比率差や高学歴ニートの生まれる背景の詳細は「ニートの割合は横ばいにも関わらず、大卒ニートの割合が上昇の理由」にて解説しています。
ニートが生まれる要因とは?
現在(2017年度)約54万人いるとされるニートがなぜ数年にわたって人数比率を下げずにいるのか?統計では一色単にされるニートの人たちですが、働かずにいる理由は人によってまちまちです。
そこでここからは、なぜ54万人(2017年度)いるとされるニートの人たちが働かない道を選んだのか、その理由を考察していきます。
ニートを希望する理由
まず2012年になりますが、下記は現在働かずにいるのかを、無職の若者にヒアリングした調査結果です。
理由 | 割合(%) |
---|---|
病気・けが | 29.7 |
その他 | 27.8 |
特に理由はない | 15.8 |
学校以外で勉強中 | 12.1 |
仕事をする自信がない | 6.4 |
通学中 | 4.2 |
出産・育児中 | 1.3 |
ボランティア活動中 | 0.8 |
介護・看護中 | 0.5 |
家事 | 0.2 |
調査結果を見てみると、働かずにいる理由は一色単にこれといえるものではなく、いくつかの要因に分散していることが分かります。
ここからは調査結果から分かる代表的な現在働いていない理由について詳しく解説していきます。
要因1)けが・病気
ニートになる最も大きな要因はけがや病気でした。けがや病気ばかりは働きたくても働けず、止むを得ず退職や働かないという道を選択してしまっている方が多いのでしょう。なお、このけがや病気はがんや骨折といった身体的疾患だけでなく、うつ病といった精神的疾患も含まれます。
例えば過去に就職したとしても、職場での過度なストレスによりうつ病に発展し、ずっと就職できないでいるというケースも考えられます。その場合、働くことに対してポジティブなイメージがわきにくくなってしまうことが容易に想像できます。
またてんかんやリウマチなどの完治することが中々難しい疾患を持っている場合は、採用されたくても採用されない、といったことから就労意欲がなくなってしまうことも考えられます。
しかしながら、けが・病気に関しては、けが・病気という要因が解消できたなら、比較的容易に就職することができるのではないでしょうか。
日本の労働人口が減少する中で、ここ最近、労働市場が売り手市場に変わってきています。それに伴い、ニートの方の就職を支援するサービスがより手厚くなってきています。それは過去に無職の期間があったとしても、社会復帰しやすい環境になってきているということを示唆するのではないでしょうか。
またここ数年、世間からうつ病やパニック障害といった精神疾患者の現状がより理解されやすくなっています。労働人口が少なくなる日本では、たとえけがや病気を抱えていたとしても、求職者側に働く意欲があれば、就職が容易にできる状況に変化する必要があるのです。
要因2)特に理由はない
理由がないことが理由-。何とも形容しがたい理由ですが、これは社会でニートに抱いている印象に近い要因とも言えます。
また理由がないと答える過程の中で、様々な働く意欲を削がれる要因がいくつもあったことが想像できます。
例えば、本当は就きたい職種があったにも関わらず、本人の年齢、学齢、身体的特徴、能力の問題で就くことができなった人もいるでしょう。過去に就職をしたけれど、職場で上手くいかず、中には解雇されてしまい、その後就職活動も上手くいかずに働かずにいる人もいるでしょう。
家族といった身近な人からの金銭的援助が充実しており、金銭を得るために働く必要はなく、何のために働くのかがよく分からないといった人もいるのではないでしょうか。
働かなくなった理由は一つだけでなく、色々な理由が組み合わさっており、本人もなぜ自分が働かないのかを一言で説明できないといった現象も起きているのではないでしょうか。
その証拠に、「その他」の回答をした人がけが・病気の次に多くなっており、働かずに無職でいる理由は人それぞれであり、そもそも働くなった理由をひとまとめにすることが困難であることが分かります。
要因3)学校以外で勉強中
まず「学校以外で勉強中」とは、例えば資格取得(弁護士や会計士など)のために独学中であったり、所謂受験浪人もこのカテゴリーに含まれます。
この要因は直近では働く意欲はないものの、将来自分の望む職種に就きたく、自分の望む職種に就く手段として資格取得のための勉強や受験勉強を行っているため、結果的に就職をしなかったという言い方が正しそうです。
よってこの理由も病気やけがと同じく、時間が経ち、勉強する目的が達成できれば、就職することが比較的容易なのではないでしょうか。
ここまでニートが生まれる要因についてまとめてきました。
実はニートが生まれる要因は世間がイメージしている、「働く意欲がなくて働いていないだけ」、「単に怠けたいだけ、甘いだけ」といった要因だけでなく、けがや病気、勉学中など、要因は人それぞれで多岐にわたることが分かります。
よってニートって結局どういう状態の人のことを指す言葉なの?と定義自体、見直す必要もありそうです。
まとめ
労働人口が少なくなっていきている日本で、ニート数の比率が変わっていないことは注目すべき問題です。就職や転職がしやすくなっており、希望のキャリアに進みやすくなってきている今だからこそ、働く人と働かない人の格差がどんどん広がってしまうことは避けたいものです。
またニートが社会問題化したにも関わらず、なぜ学校を卒業後一度も働いていないのかもしくは一度就職したにも関わらずなぜ離職してしまったのか、その理由についてはこれまであまりクローズアップされてきませんでした。
よって世間からはニート=ただ働きたくない人、怠け者という印象を抱かれがちです。働かずに無職になった理由は人それぞれにも関わらず、世間から働かずに無職のままでい続ける理由が共感されにくく、本人はもちろん、家族や友人など身近な人も苦しんでしまうことも少なくありません。
さらにニートとひとくくりにするのも難しいぐらい、「なぜ働かずにいるのか?」といった無職でいることの理由が多様化してきています。ニートの方を「ニート」とひとくくりにして支援するというよりは、ニートの方のそれぞれの就職していない理由を早期に解消することが、ニート数を減らすためには必要なのではないでしょうか。
通常、就職していない期間が長ければ長いほど、内定を得て入社に至るまでには、高いハードルが待ち受けています。(ニート増加の問題点や長期間ニートでいることのリスクについては「ニート増加の問題点」について解説しています。)
ですが、約54万人いるニート数を減らすためにも、長期間就職をせずに今に至る人や一度は就職をしたものの、理由があって退職したままでいる人でも容易に社会に復帰しやすい環境が今求められています。