フリーターという言葉が社会に根差してから久しいですが、現在の日本におけるフリーター数や推移についてはあまり報道されていません。よって日本でどれくらい存在するのか知らない人の方が多いのではないでしょうか?

また現在非正規雇用者が増加しているという報道もよく目にしますが、やはりフリーター数も昔と比べて増加の一途をたどっているのでしょうか?

そこで今回は現在の日本におけるフリーターの人数と、ここ数年間の人数の推移についてまとめました。

また一口にフリーターと言っても、フリーターになる理由はさまざまです。しかしフリーターになった理由は主に4つに分類できると言われています。そこでその正社員として就職をする道を選ばずに非正規雇用として働くことを選んだ主な4つの理由(タイプ)についても解説します。

フリーターの定義からおさらい

“フリーランス・アルバイター”の略で、15~34歳のアルバイトやパートとして従事している人のことを指します。
※ただし、男性については継続就業年数が1~5年未満の人、女性については未婚で仕事を主にしている人に限定されます。

また現在ニートであっても、「アルバイト・パート」を希望している人もフリーターに含まれると言われています。(ニートは完全に働く意志がない人のことを指します。)

パートやアルバイトの中にフリーターは内包されており、年齢や条件によってフリーターと呼ばれるのかそれともアルバイト・パートと呼ばれるのかが決まってくるのですね。

フリーターの人数の推移

人数の推移

それでは、本題の人数の推移を見ていきます。

フリーターの人数推移

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017
数(万人) 184 180 182 178 166 154 152

参考:労働力調査(詳細集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果の概要
※当調査では、フリーターのことを「若年層のパート・アルバイト及びその希望者」と呼称している。

人数ですが、2017年は約152万人でした。また昨年と比べて2万人減少していることが分かります。さらにここ数年、人数は減少の一途をたどっています。実際に2015年と2016年は昨年に比べて12万人も人数が減少したのです。

人数が減少している要因として日本の労働人口が現在年々減少しており、人手不足に陥る企業が増えていることから、日本の労働市場が潤っており、以前よりも正社員としての就職がしやすくなってきていることが背景にあります。

またフリーター以外の選択肢(派遣社員、契約社員、フリーランスなど)も豊富になってきており、選択肢が「正社員として働く」か「フリーターとして働く」かの2択だけではなくなってきていることも1つの要因です。

人数比率の推移

続けて、若年人口(15歳~34歳)に占めるフリーターの人数比率の推移を見ていきます。

フリーターの人数比率の推移

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017
比率 6.6 6.6 6.8 6.8 6.4 6 5.9

参考:労働力調査(詳細集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果の概要

若年人口に占めるフリーターの数の比率は2017年は5.9%でした。また2014年をピークに人数比率が右肩下がりなことが分かります。人口に占めるフリーターの割合は減っているのですね。

フリーター数や人数比率は景気の変動による労働市場の変化によっても変わるため、今後も減少傾向が続くのか注視したいところです。

男女別人数の推移

ちなみに、男女別にフリーター数に変化はあったのでしょうか?

フリーターの男女別人数の推移

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017
男性(万人) 85 82 84 79 77 72 70
女性(万人) 99 98 98 99 89 82 82

参考:労働力調査(詳細集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果の概要

まず前提としてフリーター数は男性よりも女性の方が多いのですね。また男性、女性どちらも同じく減少傾向にあります。

さらに男性と女性の人数の推移の違いを見ていくと、男性の減少数に比べて、女性の減少数が多いことが分かります。特に2014年から2015年にかけては女性の人数が約10万人減少しています。

これは、2015年に女性活躍推進法が施行され、男女の機会均等がより推し進められたことにより、女性の正規雇用や他の雇用形態の登用が増えたことが考えられます。

また働き方改革が進み、時短勤務、シフト勤務、在宅勤務など場所や時間にとらわれないワークスタイルが多くの企業に取り入れられる中で、正社員であり続けながらも柔軟に働くことが可能な世の中になってきていることも一因なのではないでしょうか。(実際に女性が出産や育児で正社員としてのキャリアを一時期離脱するいわゆる「M字カーブ」も解消されつつあると言われています。)

さらにフリーランス、契約社員、派遣社員といった、さまざまな雇用形態が増えていく中で、「フリーター」でなくても自由な働き方をしながらも収入を得られる他の手段が増えてきたため、フリーターの道を選ぶ人が少なくなってきたことも考えられます。

年代別内訳の推移

ちなみに、年代別のフリーター数に変化はあったのでしょうか?ここでは、フリーターの年代別内訳とその推移を見ていきます。

フリーターの年代別内訳の推移

年齢/年 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017
15~24 86 77 80 73 70 63 64
25~34 98 103 102 105 96 91 88

※単位:万人

参考:労働力調査(詳細集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果の概要

まず前提として25~34歳までの人数の方が15~24歳までの人数と比べて多いのですね。これは15~24歳は学生の方が多いことやそもそもの人口分布の違いによるものでしょう。

また注目すべき点として、減少率も15~24歳の方が25~34歳と比べて高くなっています。これは裏を返せば、フリーターの年齢層が上がってきていることを意味します。

※ちなみに人数だけでなく、人口に占めるフリーターの割合も30代の特に女性の方が高くなっています。さらにフリーターの学歴構成にも変化が見られ、今や4割近くのフリーターが大卒以上の学歴となっています。
なぜフリーターの高年齢化・高学歴化が進んでいるかについては「フリーターの割合は?30代・大卒フリーターの割合が上昇中?」にて解説しています。

このことから年齢層の上昇は今後も続き、フリーターの高齢化が進んでいることが分かります。(実はニートに関しても高齢化が進んでおり、非正規雇用者および無職者の高齢化が進んでいます。これは、年齢を重ねても低所得な人が増えていることを示唆し、貯蓄ができない、家庭生活が営めないといった問題を含んでいます。)

フリーターになる主な理由

全国に約152万人いるとされるフリーター。ここからは、なぜ就職ををせずアルバイトやパートとして働く道を選んだのか、その主な理由を見ていきます。実は、フリーターになる要因は現在、主に4つに分類できることが分かっています。

夢追型

これは叶えたい夢があるものの、自分のやりたいことだけでは収入が乏しく、生きていくためにフリーターになったタイプのことです。

モラトリアム型

このモラトリアム型はさらに2つのタイプに分類することができ、「離学モラトリアム型」と「離職モラトリアム型」に分類することができます。

離学モラトリアム型

大学などの教育機関を卒業、中退した後にすぐフリーターになった人のことです。
自分の本当にやりたいことを探すために、フリーターになった、というケースが当てはまります。
幸せの青い鳥を探しているというたとえが分かりやすいでしょうか。

離職モラトリアム型

一度は正社員となって働いた経験があるものの、正社員で働くことが嫌で、フリーターになった人のことです。
正社員として働いていた間に、心身共に疲れてしまい、再就職する自信がないといったケースもこのタイプに当てはまります。

やむを得ず型

これは、フリーターになりたくてなったというよりは、生活のために仕方なくフリーターをしているタイプのことです。

例えば、10年ほど前に「派遣切り」問題が取り上げられましたが、派遣契約が止む無く終了し、次の派遣契約も決まらないため、フリーターになったというケースがこれに当てはまります。また病気やけがのため、フリーターを選択しているケースもやむを得ず型に当てはまります。

ステップアップ型

これは、就きたい職業に就くための勉強や準備を行うためにフリーターをしているタイプのことです。例えば弁護士になるには、司法試験に合格する必要があり、受験勉強の時間を確保するために、働く時間や場所を比較的自由に選べるフリーターになったというケースがこれに当てはまります。

ちなみにこの「ステップアップ型」については、2016年に新しくできたタイプです。

仕事の高度化や専門化が進む中で、就きたい職業に就くために、資格や専門知識の習得が必要な場合が多々あります。その際、一時的にフリーターになり、勉強に集中したい人が増えてきていると背景から、このステップアップ型が新設されました。

参考:労働政策研究報告書 No.199 大都市の若者の就業行動と意識の分化 ―「第4回 若者のワークスタイル調査」から―

まとめ

フリーター数や労働人口に占める人数の比率は徐々に少なくなってきており、今後も減少傾向が続くものと思われます。

しかし、年齢別の内訳の推移で見たように、今後は20代後半から30代前半の高齢層のフリーター数の割合が多くなるという別の問題がクローズアップされるものと思われますが、これは大きな問題であると考えます。なぜなら、働き盛りである同年代の正社員と比べた時の、収入格差や社会的信用の格差が広がってしまい、将来の生活基盤が整えることが難しくなることを意味するからです。

それにより、例えば、十分な貯蓄が出来ずに住宅の購入を諦めざるを負えなくなるかもしれません。(そもそも社会的信用という点で住宅ローン審査に通りにくい、といった問題もあります。)

将来の結婚資金も貯めることができず、結婚したくてもできない、という状況に陥ってしまうかもしれません。子供への教育資金も十分に貯めることが出来ず、晩婚化や少子化を助長してしまう、といったこともあり得るでしょう。

さらに今の日本では老後、年金だけで生活することは非常に難しいことは誰もが予想していることであり、将来の老後資金も現役の間に準備する必要があります。※一生涯フリーターでいることのリスクは「フリーター増加の問題点」でも詳しく解説しています。

もちろん、フリーターといっても、それぞれの置かれている環境や、非正規雇用として働くことを選んだ理由は様々なため、一概にフリーターでいつづけることが悪いということではありません。しかしフリーター数も比率も減少する昨今、フリーターを選択するということは、周りとの収入的格差や社会的信用の格差が広がることも意味します。

フリーターのメリットやデメリットや正社員との働き方や待遇の違いをよく調べずに、「何となく」でフリーターを選択していませんか?後から「こんなはずじゃなかった…!」と、後悔することは避けたいものです。