フリーターの場合、正社員や契約社員といった他の就労形態と同じく働いて収入を得ているため、給与の受け取りと同時に所得税が徴収されます。
しかしながら住民税や消費税といった他の税金と違って所得税の払い方は、通常給料受け取り時に天引きされるために、自身が毎年税金をどれくらい払っているのかや、計算方法についてしっかりと把握している方は少ないのではないでしょうか。
そこで今回は所得税における計算方法について解説します。
また年収額によっては税金を払わなくてよい場合が存在するため、どのようなケースであれば税金を払わなくてよいのかについても解説します。さらに税金の払い方や払う時の注意点についても解説します。
フリーターが払うべき税金の種類
まずはそもそもフリーターが給料を受け取る際に払わなければいけない税金の種類について紹介します。これはフリーターだけでなく、何かしらの収入を得ているすべての人に発生するものになります。
- 所得税
- 住民税
※ちなみに税金とは種類が異なりますが、他にフリーターでも支払いが必要なものとしては、
- 国民健康保険
- 国民年金
上記2つが挙げられます。
ちなみに通常フリーターの場合は、国民健康保険や国民年金に入ることになりますが、正社員の4分の3以上の時間を働いているといった各種条件を満たす場合は健康保険や厚生年金に入ることもできます。(詳しくは「フリーターの社会保険の加入条件」をご覧ください。)
所得税とは?
国に対して払わなければならない国税の一種です。(ちなみに住民税は国ではなく地方自治体に納める税金です。)さらに下記のような種類に分類することができます。
- 給与
- 配当
- 事業
- 不動産
- 退職
- 譲渡
- 山林
- 一時(懸賞や生命保険の一時金など)
- 雑(公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金など)
フリーターの所得税の計算方法
ここからは本題の税金の計算方法について見ていきます。下記は現在の計算式です。
①「課税所得金額」×②「所得税率」-③「課税所得控除」
※実際には復興特別所得税額と合算された税額(2018年度:1.021%)が徴収されます。
参考:国税庁 所得税等のしくみ
ここからは①~③それぞれの求め方について解説します。
①課税所得金額の計算方法
まず「課税所得金額」とは税額を算出するにあたっての課税対象額のことを指します。
計算方法ですが、まず収入金額から下記の表に従って「給与所得控除額」を差し引いて「給与所得」というものを算出します。
収入金額(単位:円) | 給与所得控除額(単位:円) |
---|---|
~1,625,000 | 650,000 |
1,625,001~1,800,000 | 年収×40% |
1,800,001~3,600,000 | 年収×30%+180,000 |
3,600,001~6,600,000 | 年収×20%+540,000 |
6,600,001~10,000,000 | 年収×10%+1,200,000 |
10,000,001~ | 2,200,000 |
次に、給与所得の金額から「所得控除」(生命保険控除、扶養控除など14種類あります。また基礎控除といって、どの人も一律に差し引かれる控除があり、2018年度の基礎控除額は38万円となっています。またフリーターでも関係ある控除として、自身が支払った社会保険料分が丸々控除される「社会保険料控除」が存在します。)というものを差し引きます。
参考:国税庁 所得税 基礎控除
②所得税率の計算方法
次に①で求めた値毎に定められた税率を算出します。税率は金額が上がるにつれて上がっていく、「累進課税制」をとっています。以下は2018年度の税率です。
課税所得金額(単位:円) | 税率 |
---|---|
1,000~1,949,000 | 5% |
1,950,000~ 3,299,000 | 10% |
3,300,000~ 6,949,000 | 20% |
6,950,000~ 8,999,000 | 23% |
9,000,000~17,999,000 | 33% |
18,000,000~ 39,999,000 | 40% |
40,000,000~ | 45% |
参考:国税庁 給与所得者と税
③課税所得税額の計算方法
最後に「課税所得控除」が適用される場合があります。2018年度の控除額は以下のとおりです。
課税所得金額(単位:円) | 控除額(単位:円) |
---|---|
1,000~1,949,000 | 0円 |
1,950,000~ 3,299,000 | 97,500 |
3,300,000~ 6,949,000 | 427,500 |
6,950,000~ 8,999,000 | 636,000 |
9,000,000~17,999,000 | 1,536,000 |
18,000,000~ 39,999,000 | 2,796,000 |
40,000,000~ | 4,796,000 |
フリーターが払う所得税額はいくら?
ここでは実際にフリーターの年収毎に払うべき税額を計算してみました。ここではフリーターの年収のボリュームゾーンである「年収120万円の場合」、「年収150万円の場合」、「年収200万円の場合」、「年収300万円の場合」における税額を算出しました。
- 今回は分かりやすいように収入源はアルバイト先の給与のみとし、年金を含めた他の収入はなしとします
- 1人暮らしのため、所得控除は基礎控除380,000円と社会保険料控除(国民健康保険と国民年金)のみとし、ここでは生命保険料控除といった他の控除はないものとします
- 国民健康保険については東京都中央区の場合にてそれぞれの年収毎の保険料を算出しました(年収120万円の場合は46,977円/年、年収150万円の場合は101,548 円/年、年収200万円の場合は136,660 円/年、年収300万円の場合は203,090 円/年とします。)
- 国民年金については日本年金機構 国民年金の保険料を参考に算出し、月16,340円(平成30年度)、年間換算196,080円としています。※ここでは免除の申請は行わないものとします
※以下、①→課税所得金額、②→所得税率、③→課税所得控除額、④→復興特別所得税率を指します。
年収120万円の場合
①{収入金額1,200,000円-所得控除(給与所得控除650,000円+基礎控除380,000円+社会保険料控除(国民健康保険46,977円+国民年金196,080円)}×②5%-③0円×④1.021%=0円/年
年収150万円の場合
①{収入金額1,500,000円-所得控除(給与所得控除650,000円+基礎控除380,000円+社会保険料控除(国民健康保険101,548 円+国民年金196,080円)}×②5%-③0円×④1.021%=8,800円/年
年収200万円の場合
①{収入金額2,000,000円-所得控除(給与所得控除780,000円+基礎控除380,000円+社会保険料控除(国民健康保険136,660 円+国民年金196,080円)×②5%-③0円×④1.021%=25,896円/年
年収300万円の場合
①{収入金額3,000,000円-所得控除(給与所得控除1,080,000円+基礎控除380,000円+社会保険料控除(国民健康保険203,090 円+国民年金196,080円)}×②5%-③0円×④1.021%=58,239円/年
所得税を納めなくてよいケース
ちなみに収入金額によって税金を納めなくてよいケースが存在します。
それは「年収が103万円以下」の場合です。(給与所得控除額の65万円および基礎控除額の38万円の合算値が103万円であることから、課税対象となる金額が0円になってしまうからです。)
参考:国税庁 所得税 パート収入はいくらまで所得税がかからないか
※ただし年収が103万円以下の人も、源泉徴収によって給与を受け取る度に想定される徴収額分の税金が、予め天引きされているため、確定申告か年末調整を行うことで天引きされた税金を払い戻してもらう必要があります。
よって納税したくない場合は総年収が103万円を超えないように調整する必要があります。ただし年収103万円以下に抑えて働くとなると、非常にきりつめた生活を送る必要がでてきます。
よって、税金を支払うことを許容するのであれば、正社員への就職の道も考えた方が長期的に見て収入アップの可能性が高いです。
※また最終的には住民税も含めて税金を納める必要があります。例えば、年収が120万円の場合は住民税を含めると5,000円/年、年収が300万円の場合は住民税を含めると179,822円/年かかってきます。年収毎の最終的な税金額を知りたい方は「フリーターの税金額を計算してみた」をご覧ください。
フリーターの所得税の払い方
最後に払い方についてですが、フリーターの場合も、正社員と同様に「源泉徴収」ということで給与から税金が天引きされます。(ちなみに住民税の払い方は自身にて納付することが多いため、住民税と異なり自身の税額について把握していない人も少なくありません。)
よって払い方についての回答は「何も手続きをする必要はなく、給与から勝手に税金が天引きされている」となります。よってアルバイトとして働いていると知らないうちに税金を払っていることになるのですが、定められた税額以上の金額が給与から天引きされているケースが存在します。
そこで年末調整もしくは確定申告の何れかの方法で余分に払った税金を払い戻すことができます。年末調整とは、その年の収入と源泉徴収の差額を計算して、最終的な税額を確定させることを言います。
一方、年末調整を行ってくれない勤務先の場合や、年末調整を勤め先が定めた期限までに行わなかった場合は翌年の2月中旬~3月中旬の間に確定申告を行う必要があります。
またフリーターの中で、給与を2か所以上から受けていて、年末調整されなかった収入金額と他の収入額(給与と退職金以外)と合わせて20万円を超える人も確定申告を行う必要があります。例えばパートやアルバイト以外の副業で20万円以上稼いでいる人は確定申告が必要になります。
※ちなみに住民税の場合は自身で支払いに行くケースも多々あり、かつ、納付期日から1ヶ月を超えると延滞金利が7倍ほどアップするなど延滞のペナルティが大きいため注意が必要です。詳しい住民税の支払い方については「払っていないとやばい?フリーターの住民税」にて解説しています。
まとめ
所得税の払い方は住民税や消費税といった他の税金と異なり、給与から勝手に天引きされているため、自身が一体どれくらい払っているのかよく把握していないケースが多いのではないでしょうか。
よって働く際には税金がどれくらい徴収されるのかを自身でしっかりと把握して、手取り額がどれくらいかを計算したり、貯蓄をしましょう。
また税金の払い方における注意点として、2か所以上で働いているフリーターの場合、確定申告をしないといけないケースが多いです。よって確定申告をしないと余分に払った税金が戻ってきませんので忘れないように注意が必要です。
また年収103万円以下は税金を払わなくてすむ一方、年収103万円以下で生活するとなると、日々の生活がかつかつになり、十分な貯蓄ができない可能性が高いです。よって年収103万円以上稼ぎたいという場合は年収を上げるためにフリーターを卒業して正社員として就職して働くということも1つの方法です。