フリーターに限らず働いていると、給料を受け取る際に税金が徴収されます。しかしながら給料受け取り時に税金が自動的に徴収されることが多いために、フリーターがいくら納めるべきかを知っている方は少ないのではないでしょうか。
ここではフリーターは住民税をいくら払うべきなのかについて知っていただくために、計算方法について解説します。
また納税は国民の義務ですので住民税を払ってないとさまざまな悪影響が生じます。ここでは払ってない場合の影響についても紹介します。
フリーターが払うべき税金の種類
まずはそもそもフリーターが給料を受け取る際に払わなければいけない税金の種類について解説します。(ちなみに以下は雇用形態に関係なく、正社員であったとしても、フリーターであったとしても同様です。)
- 住民税
- 所得税
上記2つになります。
さらに税金とは種類が異なりますが、他に徴収されるものとしては、
- 国民健康保険
- 国民年金
が挙げられます。
ちなみにフリーターであったとしても社会保険に入ることが可能なケースがあります。またフリーターであったとしても勤め先によっては国民年金ではなく、厚生年金など会社の社会保険に入ることもできます。
住民税とはどんな税金なのか
まず住民税とは、自分が住んでいる自治体に対して払わなければならない税金のことです。
また個人がはらうべき住民税は一般的に「個人住民税」と呼ばれており、以下の課税方法があります。
- 所得割・・・前年の所得金額に応じて課税
- 均等割・・・定額で課税
- 利子割・・・預貯金の利子等に課税(都道府県税のみ)
- 配当割・・・上場株式等の配当等及び割引債の償還差益に課税(都道府県のみ)
- 株式等譲渡所得割・・・源泉徴収選択口座内の株式等の譲渡益に課税(都道府県税のみ)
参考:東京都主税局 個人住民税
また住民税には内訳が存在し、都道府県に支払われる「都道府県税」と区市町村に支払われる「区市町村税」と分けられます。
フリーターの住民税の計算方法
ここからは本題の計算方法について見ていきます。
所得割
ここでは「所得割」の計算方法について見ていきます。東京都の場合ですが、所得割は以下の計算式の合算額になります。
- 課税所得金額[(総所得金額+山林所得金額+退職所得金額)-所得控除]×税率(10%)-税額控除
- (分離課税となる所得金額-所得控除)×税率(後述)-税額控除
まず上記の計算式で出てくる「所得控除」についてですが、所得控除で一般的に大部分を占めるのが「給与所得控除」です。給与所得控除額は収入額に比例して多くなります。例えば、上記の計算式の1の総所得金額(給与の収入金額)が162万5,000円以下だと所得控除は65万円になります。
また他にフリーターに関係ある控除は「社会保険料控除」で、これは前年度に支払った国民健康保険料や国民年金(または健康保険料や厚生年金)を丸々控除してくれるものです。他にも人によっては医療費控除、生命保険料控除、地震保険料控除などが所得控除に当てはまります。
ちなみに、住民税には非課税になることもあり、下記に当てはまる人は支払いが免除されます。
- 生活保護の受給者
- 未成年者、障がい者、寡婦または寡夫で前年の合計所得金額が125万円以下
(所得が給与所得のみの方は、給与収入が204万4,000円未満) - 前年の合計所得金額が各地方自治体の定める額以下
(東京23区の場合、扶養者がいない場合は35万円。
扶養がある場合は35万円×本人・扶養親族・控除対象配偶者の合計数+21万円)
参考:東京都主税局 個人住民税
上記の基準に当てはめた場合、総年収が100万円以下だと住民税を納めなくてよいことになります。
※100万円以下というのは東京都の場合であり、都道府県によって差異があります。
ちなみに所得割については前年度の所得額によって決まります。よって今年度は所得がなかったとしても、昨年度所得が100万円以上あった場合は、納税の対象となることに注意しなければなりません。
次に2の分離課税となる所得金額ですが、これは土地・建物等、株式等の譲渡所得、先物取引に係る雑所得等、上場株式等の利子・配当所得が挙げられます。
均等割
続けて「均等割」とは、字のごとくどの人も均等に支払わないといけない税種のことです。東京都の場合、個人都民税額は1,500 円/年、個人区市町村民税額は3,500 円/年、計5,000円/年です。
参考:東京都主税局 個人住民税
ちなみに均等割についても所得割で挙げた控除となる対象者が存在しており、東京都の場合だと前年度の総年収が100万円以下の人は支払いが免除されます。
親の扶養の有無は関係なし
社会保険料は親などの扶養者がいることで、支払いが免除になるケースがあります。(詳しい条件は「フリーターが親の扶養に入るためには」をご覧ください。)
しかしながら住民税の場合は扶養の有無は関係なく、総年収が100万円以上超える場合は支払わないといけません。
よって住民税を払いたくない場合は総年収が100万円を超えないように調整する必要があります。また年収100万円以上超えて働きたい場合は、フリーターであっても住民税がかかってくることから、正社員への就職の道も考えた方が長期的に見て収入アップの可能性が高いです。
フリーターが払う住民税はいくら?
ここでは実際に一般的なフリーターが稼ぐ年収額の場合、住民税をいくら支払う必要があるのかを計算してみました。
- 今回は分かりやすいように収入源はアルバイト先の給与のみとし、年金を含めた他の収入はなしとします
- 1人暮らしのため、所得控除は基礎控除330,000円と社会保険料控除(国民健康保険と国民年金)のみとし、ここでは生命保険料控除といった他の控除はないものとします
- 国民健康保険については東京都中央区の場合にてそれぞれの年収毎の保険料を算出しました(年収150万円の場合は101,548 円/年、年収200万円の場合は136,660 円/年、年収300万円の場合は203,090 円/年とします。)
- 国民年金については日本年金機構 国民年金の保険料を参考に算出し、月16,340円(平成30年度)、年間換算196,080円としています。※ここでは免除の申請は行わないものとします
- 税額控除はここでは調整控除(2,500円)のみとします
- 住民税については前年度の収入額が対象となるため、ここでは前年度の収入額は今年度と同様とします
年収150万円の場合
- 所得割
課税所得金額{収入金額1,500,000円-所得控除(給与所得控除650,000円+基礎控除330,000円+社会保険料控除(国民健康保険101,548 円+国民年金196,080円)}×税率10%-税額控除2,500円=19,737円 - 均等割
5,000円
合計 24,737円/円
年収200万円の場合
- 所得割
課税所得金額{(収入金額2,000,000円-所得控除(給与所得控除780,000円+基礎控除330,000円+社会保険料控除(国民健康保険136,660 円+国民年金196,080円)}×税率10%-税額控除2,500円=53,226円 - 均等割
5,000円
合計 58,226円/年
年収300万円の場合
- 所得割
課税所得金額{(収入金額3,000,000円-所得控除(給与所得控除1,080,000円+基礎控除330,000円+社会保険料控除(国民健康保険203,090 円+国民年金196,080円)}×税率10%-税額控除2,500円=116,583円 - 均等割
5,000円
合計 121,583円/年
※最終的には住民税だけでなく、所得税も払わなければなりません。例えば年収150万円の場合は、所得税を含めて33,537円/年、年収300万円の場合は、所得税も含めて179,822円/年払う必要があります。最終的な税金額を知りたい方は「フリーターが払う税金はいくら?」の記事にて解説しています。
フリーターの住民税の支払い方法
実はフリーターの場合、住民税が給料から天引きされないため、自分で払いに行かないといかないといけないケースが存在します。具体的には、下記ケースに当てはまる場合は、自分で払いに行かないといけなくなります。
- 事務所の総従業員数が2人以下
- 他の事務所(職場)で住民税が給与から天引きされている
- 給与額が少なく税額が引けない
- 事業専従者(個人事業主のみ対象)
- 給与の支払い時期が毎月でなく不定期
- 5月末日までに退職した者(休職等により4月1日現在で給与の支払を受けていない者も含む。)
フリーターの場合は特に下2つのケースに当てはまることが多いため、職場にて住民税額を計算することが困難なため、給与から住民税を天引きができずに自分で支払いにいかなければならないことが多いのです。
納税通知書が届き年に4回納付
自分で住民税を支払わないといけなくなった場合はどのように支払い手続きを行えばよいのでしょうか?
住民税の支払い方法ですが、フリーター側で特別な手続きをする必要はなく、自宅に納税通知書が届きます。支払い時期は年4回または年間分を一括で支払います。支払い方法は銀行振込の他、コンビニ支払や、役所での支払が可能です。その他クレジットカードによる納付や、モバイルレジによる納付もOKとされています。
また口座振替での納付も可能なため、納税通知書が届いたことに気づかず、うっかり支払い行くのを忘れることを防ぐこともできます。
参考:東京都主税局 都税の支払い方法について
住民税を払ってないフリーターはどうなる?
さて住民税の納付を忘れてしまい、払ってない場合はどのような影響が出るのでしょうか?
フリーターだけに限りませんが払ってない場合は、まず「延滞金」が発生します。延滞金の計算式は、以下のとおりです。
{税額×日数A×(特例基準割合+1%)÷365日}+{税額×日数B×(特例基準割合+7.3%)÷365日}
※特例基準割合は毎年見直され、2018年度は1.6%です。
日数A : 納期限の翌日から1ヶ月を経過する日までの期間の日数
日数B : 納期限の翌日から1ヶ月を経過した日から納付日までの期間の日数
ご覧のように、納付期日から1ヶ月を超えると延滞金利が7倍ほどアップしますので、住民税の納付を延滞することにメリットはありません。
また延滞通知も無視し、払ってない場合はどのような影響が出るのでしょうか?
延滞通知も無視し続けると、次は督促状が送られ、最終的には滞納処分として資産が差押されます。例えば給与が差し押さえられてしまい、強制的に本来納めるはずの住民税と延滞金が給与から徴収されます。
ちなみに住民税を払ってない場合は、個人の信用情報に履歴は残らないとなっていますが、例えばクレジットカードの引き落とし銀行口座が差し押さえられた場合は、何も手続きをせずにいるとクレジットカードの支払いも滞納することになります。そしてクレジットカードの支払いの滞納が続くと、いわゆるブラックリストに載ってしまいますので注意が必要です。
繰り返しになりますが、住民税を払ってないことによるメリットは ありませんので、納付期日までに支払いが出来るように予め住民税がどれくらいかかるのかを自身で計算しておきましょう。
※ちなみに所得税の場合は、自身で手続きをするのではなく給与から天引きされることが多いですが、余計に払いすぎているケースもあり、確定申告や年末調整を行うことで余分に払った所得税を払い戻してもらう必要があります。詳しい所得税の払い方については「フリーターの所得税の払い方」をご覧ください。
まとめ
今回は、フリーターは住民税をいくら支払わないといけないのかについて知っていただくために、住民税の計算方法について解説しました。また住民税を払っていない場合の影響について紹介しました。
住民税は前年度の給与額によっていくら支払うべきかが決まるため、先が不安定なことが多いフリーターだと、前年度の所得により今年度はいくら支払わないといけないのかが分かったとしても、実際に支払えるかというと別問題であり、住民税の支払いが難しくなってしまうことも少なくありません。
よってフリーターとして働く際は、住民税をはじめとした税金がどれくらい一体いくらかかるのかを常に把握しておく必要があります。そのためにまずは自身の給与額の場合、税金をがいくらかかるのかについて計算するところからはじめましょう。
またフリーターの場合、短期間で職場を転々とすることが多いため、自分で職場で徴収されず、自身で住民税を支払わないといけないことが多いです。住民税の支払いを忘れると延滞金も発生するため、支払いをうっかり忘れていて、「払ってない…!」なんてことがように気を付けましょう。
就職をしている正社員と比べると、フリーターの方は自身でいくら税金がかかるのかを計算したり管理しなければならないことが多いです。住民税がいくらかかかってもよいから総収入を上げたい場合は、年収を上げにくいフリーターでなく、年収をしっかりと上げることができる正社員として働くということも1つの方法です。