昨今、高学歴であったとしてもニートやフリーターになる人が増えています。
大学全入時代と呼ばれるほど高学歴化が進んだのも1つの理由ですが、景気の不安定感や若者の価値観も関係しているようです。
そこで今回は高学歴ニート・フリーターの現状について解説をした後、なぜ高学歴であってもニートやフリーターになってしまうのか、その特徴についてお伝えします。また高学歴ニート・フリーターが就職を目指す場合のポイントについても解説します。
高学歴ニートの現状
まずここでは現状について解説します。下記は2012年までの調査結果になりますが、学歴別のニートの割合とその推移です。
学歴/年 | 1992 | 1997 | 2002 | 2007 | 2012 |
---|---|---|---|---|---|
中卒 | 28.8 | 25.2 | 28.1 | 23.8 | 21.3 |
高卒 | 58.4 | 56.1 | 51.2 | 50 | 52.3 |
短大・専門卒 | 6.9 | 9.6 | 9.5 | 12.7 | 11.3 |
大学・大学院卒 | 5.8 | 9 | 11.2 | 13.1 | 14.6 |
参考:若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状② ― 平成 24 年版「就業構造基本調査」より ― (P,13)
2012年の調査結果によると、ニートのうち大学・大学院を卒業した人の割合は14.6%であったことが分かりました。よって今やニートの7人に1人が大卒・大学院卒なのです。また他の学歴と比べると、大学や大学院を出ているニートの割合だけが年々増えています。よってニートの高学歴化は事実のようです。
ちなみに「ニートの割合」で紹介しているとおり、ニート全体の割合は2.1%と例年横ばい状態にあるにも関わらず、ご覧のとおり高学歴なニートの割合は増え続けていることが分かります。
加えて海外と比べても日本のニートは学力が高いそうです。OECDが実施した PISAと呼ばれる、各国の無職の若者の学力テスト結果において、日本のニートの数学力、読解力、科学の知見それぞれの成績が上位だったそうです。
参考:Investing in Youth: Japan OECD REVIEW ON NEETS Executive summary and Assessment and policy options(P,9)
さらに日本の学歴の中では最高峰の東大卒のニートの割合についても調べてみると、2016年度の東大の卒業生の全3,140人のうち、進学や就職をしなかった人は420人だったそうです。
※この420人という数字は、フリーターになった人や就職せず自身で会社を立ち上げた人なども含まれます。
参考:東京大学の概要 資料編 2017(P,10)
とは言え、東大を卒業しても1割強の人が卒業してもすぐには就職をしていないという状況です。さまざまなデータから確かに高学歴ニートと呼ばれる人は増えているようです。
高学歴フリーターの現状
次に高学歴フリーターの状況についても見ていきます。下記は2016年までの結果になりますが、学歴別のフリーターの割合とその推移です。
学歴/年 | 2001年 | 2006年 | 2011年 | 2016年 |
---|---|---|---|---|
高校 | 43 | 30.5 | 22.8 | 18.7 |
専門・短大・高専 | 28 | 33.4 | 30.8 | 24 |
大学・大学院 | 11 | 21.1 | 27.2 | 40.6 |
中卒・高校中退 | 11 | 7.8 | 7.5 | 7.8 |
高等教育中退 | 6 | 7 | 9.9 | 8.2 |
在学中・その他 | 0 | 0.2 | 1.7 | 0.7 |
参考:労働政策研究報告書 No.199 大都市の若者の就業行動と意識の分化 ―「第4回 若者のワークスタイル調査」から―(P,103)
2016年の調査結果になりますが、フリーターのうち大学・大学院を卒業した人の割合は40.6%でした。
「フリーターの人数」、「フリーターの割合」にて紹介しているとおり、フリーター全体の総数は約152万(2017年)、総人口に占める割合は5.9%(2017年)と、フリーター全体の人数や割合ともに年々減少しているにも関わらず、大卒以上のフリーターの割合については増えていることが分かります。
また他の学歴の割合が軒並み減少しているにも関わらず、大学や大学院を出たフリーターの割合は年々増えていることが分かりました。
よって大学を出たからといって、フリーターにはならないことはなく、フリーターとして生活している人も一定数いることを意味しています。
大学や大学院を卒業してもフリーターとして生きていくということが少数派ではなくなってきているのです。
高学歴ニートやフリーター増加の要因
高学歴であったとしても、ニートやフリーターになる可能性が上がってきていることが分かりました。まずここではニートやフリーターになる要因に従来割合が多いと言われていた低学歴(中卒・高卒など)と、最近割合が増えている高学歴に違いがあるのかを見ていきます。
高学歴ニートと低学歴ニートの違い
2002年になりますが、内閣府はニートを3つの分類(求職型、非求職型、非希望型)に分けたときの学歴別の違いについて調査しました。
※「求職型」とは現在就職活動中のニート、非求職型とは就職活動中ではないが就職を希望しているニート、非希望型とは就職を希望していないニートのことを指します。
すると、高学歴(大卒・大学院卒)のニートは上から順に「求職型」「非求職型」「非希望型」であることが分かりました。また他の学歴と比較すると、低学歴(中卒や高卒)の場合は上から順に「非希望型」「非求職型」「求職型」でした。
参考:若年無業者に関する調査(中間報告) – 内閣府(P,3)
よって高学歴なニートは低学歴のニートと比較すると、就職を希望していているがやむをえない理由があってニートでいるという特徴が浮かび上がってきます。
ニートにならざるを得ない理由とは何でしょうか?ここからは高学歴でもニートやフリーターにならざるえない理由や低学歴の方とな異なる特徴をいくつかご紹介します。
資格の取得のため
これは資格の取得が就職に直結するような資格(例えば司法試験、教員採用試験、公務員採用試験)を取得するために、就職をせず勉強に励んでいるケースが当てはまります。
これらの資格の取得が就職に直結する資格の場合、取得の難易度が高い場合が多く、付け焼き刃的な勉強方法では資格を取得することが難しく、膨大な勉強時間を必要とします。
しかし就職をしてしまうと、まとまった資格取得のための勉強の時間を確保することが難しくなるため、ニートやフリーターとなって、試験勉強に時間を費やしているのです。
海外留学のため
以前から語学や専門技術を学ぶための手段として海外留学する人が一定数います。その際、就職は諦めざるをえなく海外留学の前後にニートやフリーターになる人がいます。
就職がうまくいくように、また就職後に高い結果を出すために留学するのに留学後思うように就職ができずに無職のままでいるとは何とも皮肉ですね。
適性と応募企業のミスマッチ
これはさらに2つ原因が存在し、1つは大学在学中に就職活動を行ったものの、1社も内定を得ることなく卒業し、ニートやフリーターになったケースです。
もう1つはいくつかの企業から内定を得ることができたとしても、自分の希望条件とは合わず内定を辞退した結果、就職先がなくなり、ニートやフリーターになったケースです。
そしてこれらの何れのケースも自分の適性とかけ離れた企業を受けていることが原因です。現在新卒の有効求人倍率は上昇しており、単純計算ですが1人1社以上の内定が出るようになっています。
しかしながら、仕事内容へのこだわりが強いために望み通りの企業でないと就職ができず、結果ニートやフリーターになってしまうのです。
高学歴ニートやフリーターになる人の特徴
現在高学歴のニートやフリーターが増えているものの、高学歴の人が全員ニートやフリーターになるわけではありません。
ここでは高学歴なニートやフリーターになる人の特徴について解説します。
2005年の結果になりますが、就労経験がある大卒者のニートには低学歴のニートと比べて以下のような特徴がみられることが分かりました。
- 離職理由は人間関係におけるつまずきや心身の不調
- 親から期待されていたと感じる
- 他人と話すことが難しい
また同じく低学歴なニートと比べた場合の、就労経験がない大卒ニートの特徴についても以下のようにまとめられていました。
上記の特徴を踏まえて、低学歴な方と比較した場合の高学歴でニートやフリーターになる人の特徴をさらに考察します。
コミュニケーションを取ることが苦手
上記のヒアリング結果でも、大卒者のニートは就労経験の有無に関わらず「他人と話すことが難しい」と回答しています。
また就労経験があるニートの離職理由も「人間関係におけるつまずきや心身の不調」が挙げられていることから、高学歴ニートやフリーターは職場での円滑な人間関係を築くことが難しいことが考えられます。
高学歴であることと人間関係を円滑に築けるかは全くの別問題であり、高い学力を獲得する能力とは違った能力がコミュニケーション能力です。
仕事で成果を出す上で1人で完結できる業務は非常に少なく、いずれの職場でも人間関係を築くことが求められます。仕事上での良好な人間関係を築けない場合、業務に支障が出ることが多くなり、結果就労意欲がそがれてニートやフリーターになってしまうのです。
親からの過度もしくは過少な期待
上記のヒアリング結果では、就労経験がある大卒のニートが親から期待されていたと感じるのに対して、就労経験がない大卒のニートは親から期待されていると感じたことはないと回答しています。
一見すると両極端な親のあり方ですが、どちらも親から適切な期待を受けてこなかったということになります。
親が子に対して過度な期待を寄せるケースでは、子も親の期待に応えようとしてよい成績をとろうとします。その結果高学歴になったのではあれば、親の期待に応えて順風満帆な人生を歩んできているため、仕事での失敗を人一倍ネガティブにとらえてしまいます。
反対に親から何も期待されていない人生を歩んできた場合、「自分は何をやってもダメなんだ。」というような自己肯定感を保つのが難しくなります。結果仕事に対しても、受け身の姿勢でいることになり就職に対しても前向きになれません。
女性の高学歴ニートやフリーターの特徴
近年女性の高学歴化も伴って、女性の高学歴ニートやフリーターも比例して増加しています。
女性の場合、上記に挙げた特徴に「まじめすぎる」「繊細」「完璧主義」と比較的女性が多く持つ特性が加えて挙げられます。
またそれら女性の多くが、まじめなため学力は高く、結果高学歴であるものの、まじめな性格が故に、勤め先での過度に社内の人間関係の構築にストレスを感じたり、思い通りに業務が進まないことに対して自分を責めてしまうこともあります。(特に女性の場合、人間関係で悩む機会も多いと言われています。)また完璧主義がゆえに、仕事でミスをすることへの過度な恐怖も抱いているようです。
女性はなお一層高学歴化しており、それに伴い女性のニートやフリーターも増加しているものの、だからといって女性に特化した高学歴ニートやフリーターに向けた就職に関する情報が世間ではあまり出回っていないのが現状です。
よって大卒後一度も働いたことがない女性や、離職期間がある女性向けの、就職方法に関する情報は充実しておらず、適切な情報を手に入れることが難しいのが現状です。
特に女性の場合、どうしても妊娠や子育ての期間中はフルタイムでバリバリと働くことが難しいため、なおさら自身の望むキャリアを早期に明確にして、行動に移す必要があります。企業側も年齢を重ねて出産期と重なる女性については、明文化してはいないものの、早期離職を懸念して採用基準も一層厳しくしています。
女性の場合は「その企業で長く働く覚悟があるか?」といった就職する上での覚悟をより一層問われることになります。
高学歴ニートやフリーターからの脱出方法
ここまで高学歴ニートやフリーターの特徴や増加の要因について解説してきましたが、ニートやフリーターを脱出する方法はあるのでしょうか?ここでは高学歴なニートやフリーターが、現状を打破して就職するための方法について解説します。
自分の強みを活かせる企業に就職する
先ほど高学歴ニートやフリーターの増加の要因の1つとして、「自分の適性と就職したい企業の求める人材のミスマッチが続いているため」を挙げました。よって自身の志向と就職先や就職先での職務内容とのミスマッチが解消できれば就職することは可能となります。
ちなみに強みとはイコール学力ではありません。学力ではなく、仕事上役立つ能力を低いレベルでも構わないのでたくさん挙げていきましょう。また自分の適性を「エムグラム」のような判断ツールにて見極めていくのも手です。また身近な友人やキャリアコンサルタントのような専門家に診断してもらうのも1つの手でしょう。
能力や適正が棚卸しできたのであれば、棚卸しできた自分の強みを活かせる企業を探していきます。
その際、大手企業だけでなく中小企業であったとしても、強みを活かせられる職場であれば就職の検討をしましょう。また企業の規模関係なしに、現在無職やフリーターであったとしても就職可能な求人を見つけましょう。
コミュニケーションスキルについて学ぶ
先ほど高学歴ニートやフリーターになる人の特徴の1つとして、「他人とコミュニケーションを取ることが苦手」を挙げました。よってコミュニケーションスキルを後天的に身につけることができたのであれば、この悩みは解決されるのではないでしょうか。
今やコミュニケーションスキルについて書かれている書籍も多く出版されています。また「コミュトレ」といったような、ビジネスに特化した話し方やコミュニケーションスキルを伸ばしたい人のためのスクールも開講されています。
コミュニケーションスキルについては専門的に学ぶ機会が少なかったがゆえに身につかなかったという言い方もできるでしょう。
元々学力が高い高学歴ニートやフリーターであれば、コミュニケーションスキルを体系的に学ぶ能力も高いと言えるのではないでしょうか。
まとめ
今回は高学歴ニートやフリーターの現状や特徴、脱出方法について解説しました。高学歴化は確実に進んでおり、特に女性において顕著であることが分かりました。
ニートやフリーターからの脱出策については、一足飛びにせず計画を立てて一歩ずつ行うことが大事です。特に、長年家の中にいた人が、人と接するハードな仕事を始めると、心身の疲労が積み重なって病気になったりします。
また現在、ニートやフリーター向けの就職支援サイトが存在します。ニートやフリーター向けの就職支援サイトであれば、自分以外にもいる何人もの同じ境遇の人が、仕事を探しているということになります。
現在ニートやフリーターであることに理解を示してくれているところですので、スタッフも同じような境遇の方たちの立場に立って就職先を斡旋してくれるためおすすめです。