フリーターであったとしても収入がある限り、税金を支払う必要があります。しかも正社員であれば基本的に会社が給与をもらうときに税金が天引きされており、税金についてあまり意識する必要はありませんが、フリーターの場合、職場を転々とすることが多く税金の支払いも自身で行う必要があります。
しかしながら、税金がいくらかかるのかについて義務教育では習わないために、いくら自身が税金を払うべきかについて知っている方は少ないのではないでしょうか。
そこで今回はフリーターが払うべき税金の種類や、自身がいくら税金を支払う必要があるのかといった税金の計算方法や、税金の支払い方法について見ていきます。
また具体的に、年収が120万・150万・200万・300万で実際の税額を計算してみました。
税金をできるだけ納めなくてよい対策方法があるのかについても検証していきます。さらに税金を払うことを忘れてしまい、滞納した場合の影響についても考察していきます。
フリーターが払うべき税金の種類
まずはフリーターが給与を受け取る際に払うべき税金の種類についてですが、「住民税」と「所得税」の2つになります。
さらに税金とは種類が異なりますが、他に払うものとしては、「国民健康保険」と「国民年金」が挙げられます。(ちなみにフリーターであったとしても社会保険に入ることが可能なケースがありますので、国民健康保険や国民年金ではなく、勤め先の社会保険に入って健康保険や厚生年金を払う方もいます。)
フリーターが払うべき税金はの計算方法
ここでは、フリーターはいくら税金を払う必要があるのかを知るために、税金の計算方法を解説します。ここでは、「住民税」と「所得税」がそれぞれいくらかかるのかについて見ていきます。
住民税の計算方法
まず住民税は前年度の収入額に応じて課税額が決まる「所得割」と誰もが定額で支払う必要がある「均等割」から構成されています。
ここからは「所得割」と「均等割」のそれぞれの計算方法について簡単に解説します。
計算式は課税所得金額(総所得金額-所得控除)×税率(10%)-税額控除となっています。また所得割は前年の収入金額を元に計算される点に注意が必要です。
まず課税所得金額を求めるにあたり、収入額から所得控除を所得控除を差し引きます。所得控除とは、「配偶者控除」、「扶養控除」、「社会保険料控除」など、個人的な事情に合わせて税負担が調整できるように設けられている控除のことです。
この中でフリーターに関係があるのは、給与額に応じて差し引かれる「給与所得控除」、社会保険料分が差し引かれる「社会保険料控除」、誰もが33万円/年(2018年度・東京都)差し引かれる「基礎控除」の3つです。
また下記は2018年度の収入金額毎の給与所得控除額です。
給与の収入金額(円) | 給与所得控除額(円) |
---|---|
~162万5,000 | 65万 |
162万5,000~180万 | 収入金額×40% |
180万~360万 | 収入金額×30%+18万 |
※フリーターの収入額のボリュームゾーンのみ記載
次に計算式に出てくる「税額控除」といって、税額を算出した後にその税額から個々の税負担によって一定額を差し引きます。この税額控除のうちフリーターに関係がある控除としては、他の人との税負担との調整を図る目的の「調整控除」が挙げられます。
参考:東京都主税局 個人住民税
(東京都の場合)個人都民税の税額は1,500 円、個人区市町村民税の税額は3,500 円、計5,000円となっています。
参考:東京都主税局 個人住民税
※「所得割」と「均等割」のさらに詳しい計算方法は「フリーターの住民税はいくら?」の記事もご覧ください。また実際の年収毎の住民税額について知りたい方は後段の「フリーターが支払う税金はいくら?」をご覧ください。
また後ほど、年収が120万、150万、200万、300万の場合で具体的に計算しますので、住民税の具体的な金額が知りたい方はそちらを参考にして下さい。
所得税の計算方法
まず所得税は給与といった収入額に応じて国に払う国税の一種です。また計算式は下記のとおりです。
①課税所得金額(収入金額-所得控除)×②所得税率-③課税所得控除
※実際には上記で算出された額に復興特別所得税額(2018年度:1.021%)が合算された額が徴収されます。
①は「住民税の計算方法」と同様のため省略し、ここでは②の所得税率と③の課税所得控除について解説します。
所得税率は課税所得金額毎に定められた税率のことで、金額が上がるにつれて上がっていく「累進課税制」をとっています。以下は2018年度の税率です。
課税所得金額(円) | 所得税率(%) |
1,000~194万9,000 | 5 |
195万~329万9,000 | 10 |
※フリーターの収入額のボリュームゾーンのみ記載
参考:国税庁 給与所得者と税(2018年度)
課税所得控除は課税所得金額毎に定められた控除額のことです。2018年度の控除額は以下のとおりです。
課税所得金額(単位:円) | 控除額(単位:円) |
---|---|
1,000~194万9,000 | 0 |
195万~329万9,000 | 97,500 |
※さらに詳しい計算方法は「フリーターの所得税」の記事をご覧ください。また実際の年収毎の所得税額について知りたい方は後段の「フリーターが支払う税金はいくら?」をご覧ください。
また次の章で、年収が120万、150万、200万、300万の場合で具体的に計算しますので、所得税の具体的な金額が知りたい方はそちらを参考にして下さい。
フリーターが支払う税金はいくら?
ここでは実際に1人暮らしのフリーターが一体いくら税金を支払う必要があるのかを計算してみました。ここでは、住民税と所得税の合算値を算出しました。
- 今回は分かりやすいように収入源はアルバイト先の給与のみとし他の収入はなしとします
- 1人暮らしのため、所得控除は基礎控除(住民税330,000円、所得税380,000円)と社会保険料控除(国民健康保険と国民年金)のみとし、ここでは生命保険料控除といった他の控除はないものとします
- 国民健康保険については東京都中央区の場合にてそれぞれの年収毎の保険料を計算しました(年収120万円の場合は46,977円/年、年収150万円の場合は101,548 円/年、年収200万円の場合は136,660 円/年、年収300万円の場合は203,090 円/年とします。)
- 国民年金については日本年金機構 国民年金の保険料を参考に計算し、月16,340円(平成30年度)、年間換算196,080円としています。※ここでは免除の申請は行わないものとします
- 税額控除はここでは調整控除(2,500円)のみとします
- 住民税については前年度の収入額が対象となるため、ここでは前年度の収入額は今年度と同様とします
年収120万円の税額
- 所得割
課税所得金額{収入金額1,200,000円-所得控除(給与所得控除650,000円+基礎控除330,000円+社会保険料控除(国民健康保険46,977 円+国民年金196,080円)}×税率10%-税額控除0円=0円 - 均等割
5,000円
合計 5,000円/年
課税所得金額{収入金額1,200,000円-所得控除(給与所得控除650,000円+基礎控除380,000円+社会保険料控除(国民健康保険46,977円+国民年金196,080円)}×所得税率5%-課税所得控除0円×復興特別所得税率1.021%=0円/年
年収が120万円の場合の税金 合計5,000円/年
年収150万円の税額
- 所得割
課税所得金額{収入金額1,500,000円-所得控除(給与所得控除650,000円+基礎控除330,000円+社会保険料控除(国民健康保険101,548 円+国民年金196,080円)}×税率10%-税額控除2,500円=19,737円 - 均等割
5,000円
合計 24,737円/円
課税所得金額{収入金額1,500,000円-所得控除(給与所得控除650,000円+基礎控除380,000円+社会保険料控除(国民健康保険101,548 円+国民年金196,080円)}×所得税率5%-課税所得控除0円×復興特別所得税率1.021%=8,800円/年
年収が150万円の場合の税金 33,537円/年
年収200万円の税額
- 所得割
課税所得金額{(収入金額2,000,000円-所得控除(給与所得控除780,000円+基礎控除330,000円+社会保険料控除(国民健康保険136,660 円+国民年金196,080円)}×税率10%-税額控除2,500円=53,226円 - 均等割
5,000円
合計 58,226円/年
課税所得金額{収入金額2,000,000円-所得控除(給与所得控除780,000円+基礎控除380,000円+社会保険料控除(国民健康保険136,660 円+国民年金196,080円)}×所得税率5%-課税所得控除0円×復興特別所得税率1.021%=25,896円/年
年収が200万円の場合の税金 84,122円/年
年収300万円の税額
- 所得割
課税所得金額{(収入金額3,000,000円-所得控除(給与所得控除1,080,000円+基礎控除330,000円+社会保険料控除(国民健康保険203,090 円+国民年金196,080円)}×税率10%-税額控除2,500円=116,583円 - 均等割
5,000円
合計 121,583円/年
課税所得金額{収入金額3,000,000円-所得控除(給与所得控除1,080,000円+基礎控除380,000円+社会保険料控除(国民健康保険203,090 円+国民年金196,080円)}×所得税率5%-課税所得控除0円×復興特別所得税率1.021%=58,239円/年
年収が300万円の場合の税金 179,822円/年
フリーターの生活費はいくらか
次にフリーターが払う税金と生活費の1ヶ月のモデルケースを計算しました。ここでは年収が150万円、月収125,000円の一人暮らしのフリーターの場合の税金と生活費がいくらかかるのか、そして月収から税金と生活費を差し引いた貯蓄額がいくらなのかを計算しました。
- 収入 +125,000円
- 住民税 -2,061円
- 所得税 -733円
- 国民健康保険 -8,462円(東京都中央区の場合)
- 国民年金 -16,410円(2019年度)
- 家賃 -50,000円
- 食費 -30,000円
- 光熱費 -8,000円
- 通信費 -4,000円
収支 +5,334円
ご覧のとおり一人暮らしのフリーターの場合、税金や家賃などを払うと、毎月かなりギリギリの生活を強いられることになることが分かります。
よって一人暮らしのフリーターの場合は、なおさら税金を毎月・毎年いくら払う必要があるのかをしっかりと自身で計算して生活することが必要になります。またしっかりと貯金をしたい場合や交際費を支出したい場合は、収入をアップすることが必須となります。
フリーターの税金の払い方
ここではフリーターにおける各種税金の払い方について見ていきます。
住民税
フリーターの場合、住民税が給料から天引きされないケースが存在します。その場合は自分で払う必要があります。(これはフリーターだけでなく正社員や他の雇用形態であったとしても給与から天引きされず、自身で払いにいかないといけませんが。)
自分で支払う必要がある場合はどのように支払い手続きを行えばよいのでしょうか?
自身で支払う必要がある場合ですが、自身で特別な手続きをする必要はなく、自宅に納税通知書が届きます。支払い時期は年4回または年間分を一括で支払うこともできます。支払い方法は銀行振込の他、コンビニ支払や、役所での支払が可能です。口座振替による引き落としも可能です。クレジットカードによる納付や、モバイルレジによる納付もOKとされています。
所得税
所得税については「源泉徴収」ということで給与か税金が天引きされます。よって知らないうちに税金を払うことになるのですが、フリーターの中には定められた税額以上給与から天引きされていることがあります。
そこで年末調整もしくは確定申告の何れかの方法で余分に払った税金を払い戻すことができます。
複数のアルバイトを掛け持ちしている場合
フリーターの場合、勤務先が1か所だけでなく、2か所以上掛け持ちで働いている場合があります。複数のアルバイトを掛け持ちしている場合、年末調整されなかった収入金額と各種の収入金額と合わせて年間20万円を超えると確定申告が必要になります。
確定申告を行わない場合は脱税者となってしまいますので、注意が必要です。
フリーターにおける節税対策
ここまでの解説で年収の5~10%が税金で徴収されてしまうことが分かりましたが、控除を組み合わせることで節税することが可能となります。ここからは各種節税対策を紹介します。
対策1:個人型確定拠出年金(iDeCo)への加入
個人型確定拠出年金(以下、iDeCo)とは、自身で年金を積み立てていき60歳以降に積み立てた掛金を年金として受け取れる制度のことです。預金するだけでなく、投資信託やJ-REITなどを使って掛金の運用をすることもできます。
このiDeCoに加入した場合、なんと掛金が所得控除の対象となります。また運用益がでた場合は運用益も非課税になるのです。
一度積み立てた掛金は60歳以降しか原則引き出すことはできない、投資信託などの手数料がかかるというデメリットはありますが、フリーターの場合退職金が出ないところがほとんどのため、将来のリスクヘッジにもなります。
対策2:民間の保険への加入
民間の生命保険や地震保険に加入している場合は保険料に応じて保険料控除が適用されます。
例えば年間の保険料が80,000円を超えている場合、所得税の控除額は40,000円、住民税の控除額は28,000円となります。
掛け捨ての保険だけでなく養老保険にも適用されるため、貯金の一貫で保険に加入しておき節税するというのも1つの手なのではないでしょうか。
対策3:ふるさと納税の実施
ふるさと納税とは、自分が選択した自治体に収入額に応じた一定額を寄附ができる制度です。ふるさと納税を行うと、合算寄附額から2,000円を引いた分の住民税や所得税の控除が受けられます。
しかも、寄附した自治体の名産品などの返礼品が送られてくるため、実質2,000円で返礼品を受け取ることができるお得な制度です。
「ふるさと納税ワンストップ制度」といって5つの自治体までなら確定申告をする必要がなく、年末調整で控除の申請を済ませることができます。
しかしながら地方自治体による寄付金額の奪い合いが起きていることから、今後法改正による返礼品額の規制が敷かれる予定のため、法改正が行われる早めの寄附をおすすめします。
ちなみにここで控除上限額のシュミレーションもできますので、どれくらいの控除できるのかを確認しておきましょう。
対策4:セルフメディケーション制度の利用
セルフメディケーション制度とは、指定された市販薬代が年間1万2,000円を超えた際に、1万2,000円を超えた部分の金額が所得控除の対象となる制度のことです。(ただし年間8万8,000円が上限。)
健康診断や予防接種を受けているなど条件がありますが、風邪などで指定の市販薬を買った際は必ず領収書を残しておき、忘れずに確定申告の際に申請をしましょう。
税金を払っていないフリーターはどうなる?
さて節税対策を講じるばかりあえて税金を払っていなかったり、うっかり払いこみを忘れてしまった場合、どのような影響が出るのでしょうか?
住民税を滞納した場合の影響
フリーターだけに限りませんが、納付を期日までに行わなった場合、まず「延滞金」が発生します。延滞金の計算方法は、下記のとおりです。
{税額×日数A×(特例基準割合+1%)÷365日}+{税額×日数B×(特例基準割合+7.3%)÷365日}
※特例基準割合は毎年見直され、2018年度は1.6%です。
日数A : 納期限の翌日から1ヶ月を経過する日までの期間の日数
日数B : 納期限の翌日から1ヶ月を経過した日から納付日までの期間の日数
また延滞通知も放っておくと次は督促状が送られ、最終的には滞納処分として資産が差押されます。例えば給与が差し押さえられてしまい、強制的に本来納めるはずの住民税と延滞金が給与から徴収されてしまいます。
所得税を滞納した場合の影響
給与額から天引きされることがほとんどのため、滞納することは基本的にはありません。むしろ余計に払っている場合も存在するため、年末調整や確定申告を行い、余分に支払った税額を返還してもらう必要があります。
まとめ
今回は、フリーターが払うべき税金がいくらなのか、税金の計算方法、また実例として年収120万、150万、200万、300万の場合の税額について見てきました。フリーターだからといって一概に税金を払わなくてよいわけではなく、納税は国民の義務です。
また税金をおさえるための対策方法はいくつか存在するものの、やはりある一定の年収額を超えると控除の対象外になることから、何れにせよ税金を払わなくてはいけませんし、対策方法があるものの限度はあるため、ある程度の税金は納付しなければなりません。
最後に、フリーターで稼げる年収の平均は「フリーターの平均年収」にて紹介しているとおり、210万円ですが、年収210万を稼ごうとした場合、時給1,000円と仮定するとフルタイム(8時間)で出勤したとしても1ヶ月のうち26日~27日出勤しなければいけないことになり、1ヶ月のうち休みが3日しかないことになります。
毎日休みなく働くというのは身体にもよくないですし、プライベートな時間がもてなくなるためおすすめしません。またフリーターの場合、時給の上がり幅も小さいため結局長時間労働になってしまいます。
個人の考えにもよりますが、働く時間を考えた場合、昇給しやすい正社員に就職した方が生涯賃金は稼げるはずです。よって将来の生活が不安だという人は、長期的に見て年収が上がりやすい正社員に就職するということも1つの道ではないでしょうか。