フリーターに限らず、賃貸契約を結びたい場合、だれでも結べるわけでなく、入居基準に合致しているかの審査を経て、契約を結ぶことになります。また審査では定職に就いているかや、年収額、保証人の有無など、入居した後に賃料の支払いが滞ることがないようチェックを受けることになります。
その際、フリーターは通常年収額が正社員と比べると少なく、1つの企業にずっと雇用されるかが分からないことから、正社員に比べて賃貸契約を結ぶのが難しいと言われています。
しかし特に1人暮らしをしたいフリーターにとっては賃貸契約を結ぶことができないと、そもそも1人暮らしができなくなってしまいます。
そこで今回は賃貸契約の審査基準について説明した後、フリーターでも審査を通るためには何をする必要があるのかについて解説します。
また審査を受ける際、保証人の有無についても聞かれ、保証人を立てない場合は保証会社をつけることになります。もしもフリーター側で保証人がつけられない場合はどうしたらよいのかについても解説していきます。
賃貸契約の審査基準
まずここでは賃貸契約を結ぶ際の審査基準について解説します。
そもそも賃貸契約の審査では、物件を貸している側の大家さんや管理会社が入居希望者が入居後、家賃の支払いが滞る可能性はないかを審査します。また大家さんだけでなく、大家さんが賃貸物件の管理を管理会社に任せている場合は、管理会社も入居者を審査しています。また物件紹介の仲介に入っている不動産会社も審査をしているようです。
賃貸契約の審査基準は公に発表されているわけではありませんが、下記のような要素で審査していると言われています。
現在の手取り額
一般的に賃料は手取り額の1/3以下に抑えるとよいと言われています。
よって借りようとしている物件の家賃が手取り額の1/3を超える場合、貸し倒れになる可能性があるのではないかと思われてしまいます。
例えば月額の手取り額が15万円のフリーターの場合は、理想の家賃額は5万円以下になります。(ちなみにフリーターの平均月収は「フリーターの平均年収」で紹介しているとおり、47歳の時点で約17万5,000円と、一生涯家賃額を増やして広い家を借りるのは難しいのが現状です…。)
東京や他の大都市圏に住む場合、家賃が高く設定されていることが多く、間取りが1Kであったとしても家賃を5万円以内におさえることは難しいかもしれません。
しかしながら極力家賃が生活を圧迫しないように、物件探しをする必要があります。
雇用形態や勤務先の規模
貸す側からすると、「毎月滞りなく家賃を払ってくれるのか」を重要視しています。その指標となるのが、借主の雇用形態や勤務先の規模です。
雇用形態に関しては、フリーターといった非正規雇用より、正規雇用の正社員や公務員の方が審査に通りやすいです。非正規雇用の場合、正規雇用と比べてより雇用契約が打ち切られやすく、翌月の家賃が払えないということが発生しやすいからです。
勤務先の規模に関しては、中小企業よりも大手企業の方が倒産する可能性が低いため、家賃の支払いを滞納するリスクが低いと見なされて審査に通りやすいと言われています。さらに勤務期間が長いと信用度もアップします。
ちなみに雇用形態の方が勤務先の規模よりも重要視されています。
よってフリーターの場合、大企業に勤めていても審査に通りにくいといった現象が発生します。また業種も見られていると言われています。例えば風俗業に就いている者は生活リズムが他の人と合わず、近隣住民とトラブルになりやすいことからNGとしている大家さんもいます。
連帯保証人の有無
連帯保証人とは借主と大家さんが結ぶ賃貸契約の内容を一緒に負う人のことを言います。
例えばもし借主自身が家賃を払えなくなってしまった場合、借主の代わりに契約期間中の家賃を支払う必要があります。また連帯保証人は金銭面の補償だけでなく、借主がトラブルを起こした際に借主と一緒に対応する必要があるとされています。
よって連帯保証人については、親や親せきなど身内がなるケースが多く、また身内が連帯保証人であれば審査に問題はないようです。
また物件によっては連帯保証人を必要としないところもあるようです。反対に大家さんによっては、連帯保証人だけでなく、賃貸保証会社の契約も必須としているところもあります。
借主の人柄や見た目
これは借主が賃貸物件に住み始めた後に近隣住民とトラブルを起こさないかという観点から見られていると言われています。
よって不動産会社に申込みに行く際には、清潔感のある服装でいく方がベターでしょう。また不動産会社からの質問には淀みなく答えることも必要になってきます。
関連して単身者向けの物件では、入居者の中に小さな子どもがいると騒音トラブルに発展しやすいことから、小さな子どもがいる場合は、審査に通らないといったケースもあるようです。
フリーターでも賃貸を借りる方法
ここからは先ほど説明した、賃貸契約の審査基準を元に、フリーターでも賃貸契約の審査にとおるために必要な要素をいくつか挙げていきます。
家賃は手取り額の1/3以下に抑える
先ほどもお伝えしたように、一般的に家賃は手取り額の1/3以内におさめるのがよいとされています。
フリーターの場合、雇用形態が非正規であることがネックになりやすいため、家賃については自分が支払える無理のない額におさめるようにしましょう。
手取り額にもよりますが、単身用のアパートであれば都内であったとしても月額5~7万円で済むように調整したいものです。また年収額の証明が必要なため、源泉徴収票や数か月分の給与明細を不動産会社に提示しましょう。
連帯保証人をつける
いざフリーターが家賃を支払えなくなった時に備えて、連帯保証人をつけるようにしましょう。
連帯保証人については不動産会社によってまちまちではありますが、親兄弟または三親等以内の親戚しか認めないとしているところが多いようです。
また収入がない連帯保証人の場合は、借主と同様に家賃の支払いができなくなってしまいます。よって連帯保証人の年収額も伝えなければなりません。
また連帯保証人の年齢の上限も定年を迎える65歳前後が上限と言われています。
一番のおすすめは連帯保証人の両親のどちらかになりますが、年収額や年齢も見られているため、親だと審査に通らない場合は兄弟か親戚を保証人につけるようにしましょう。
1年分の家賃額を貯金する
フリーターの場合、大家さんや管理会社から仕事が打ち切られたとしても、継続的に家賃を払ってくれるかを見極められます。よって入居前にまとまった額の貯金をしておきましょう。
どの程度の額が必要かは不動産会社や管理会社、大家さんの考えによりけりですが、1年程度の家賃額は必要とされています。また物件によっては最初に1年間~2年間分の家賃をまとめて支払うことで、入居審査が通るところもあります。
収入が継続的にあるかが読みにくいフリーターの場合は、このような事前の備えが必要になってきます。
親の名義で賃貸契約をする
通常は契約者=住居人ということになりますが、フリーターの場合、自身の親を契約者にすることで審査に通すという方法があります。契約者が親の場合は、入居審査基準はフリーターではなく親の収入や勤務形態などになります。
フリーター自身よりも親の方が社会的信用度が高い場合は、親に契約者になってもらえないか依頼してみましょう。
ただし両親のどちらかが契約者になった場合、連帯保証人には契約者以外のだれかをつける必要があります。両親のうちもう一方の社会的信用があるのであれば、もう一方を保証人にすることでクリアになりますが、それが難しい場合は兄弟や親せきの誰かに保証人になってもらうのをお願いしなければなりません。
保証人なしでも賃貸契約できるのか?
ここまでフリーターでも審査に通る要素をいくつか見てきましたが、その要素の1つとして連帯保証人をつけることが重要とお伝えしました。
しかしながら事情があって、連帯保証人がつけられない人もいるでしょう。
連帯保証人がつけられない場合は、フリーターの1人暮らしは諦めなければならないのでしょうか?ここでは連帯保証人がいないフリーターの場合でも審査に通るための方法について解説します。
賃貸保証会社と契約する
賃貸保証会社とは、もし借主が家賃の支払いを滞らせた場合に代わりに立て替えてくれる会社のことです。(ただし立て替えてもらった家賃については、後日フリーター自身で支払わないといけません。)
最近は核家族化や片親の家庭も増えており、連帯保証人探しが難しくなっています。よって最近では連帯保証人をつけるのではなく、賃貸保証会社に保証人になってもらう人が増えています。
しかしながら誰でもこの賃貸保証会社と契約を結べるわけではありません。賃貸保証会社と契約をする際にも、審査を受けることになります。審査基準としては上記のような項目に加えて、過去の支払いの滞納歴も信用機関を通してチェックされます。
よって例えば過去に他の物件の家賃やクレジットカード代の支払いをせず、いわゆるブラックリストに入っている場合は審査に通らなくなってしまいます。
連帯保証人不要の物件を探す
物件の中には連帯保証人をつける必要がない物件も存在します。
ただし連帯保証人をつける必要がないということは、反対に人気のない物件の可能性があるという点に留意しましょう。たとえば事故物件であるとか、駅からの距離が遠いといった要素が含まれていることがあります。
入居者がなかなか決まらず、敷金や礼金が無料の物件が存在するのと同じ考えですね。この場合は、フリーター自身が1人暮らしするにあたり何を重要視したいのか、そもそも1人暮らしをしたいのかをきちんと考える必要があります。
フリーターでもUR賃貸は借りられるのか?
UR賃貸とは独立行政法人都市再生機構が運営する、公的な賃貸住宅のことです。
UR賃貸は民間の賃貸物件と異なり、礼金や仲介手数料、更新料が不要となっています。さらには連帯保証人をつける必要がないとされているため、連帯保証人が立てられないフリーターでもUR賃貸は借りることができます。またほとんどのUR賃貸住宅の先着順で申込みができることから人気の賃貸物件となっています。
しかしながらUR賃貸も誰でも申し込めるわけではなく、一定の条件があります。例えば単身者向けの家賃が月62,500円未満の場合、基準月収額が家賃額の4倍ないといけないとされています。
参考:UR賃貸住宅 お申込み資格
よって年収をハードルをクリアすることが必要となりますが、もし年収額が基準に満たなかったとしても特例が存在します。例えば家賃を一括で前払いする制度(家賃等の一時払い制度)や月額家賃の100倍以上の貯蓄額を示す(貯蓄基準制度)といったことで、要件を満たすことができます。
またフリーター自身の手取り額が基準月収額や基準貯蓄額が1/2以上ある場合は親族との収入を合算させることもできるようです。
参考:UR賃貸住宅 よくあるご質問
東京でフリーターが賃貸を借りるには?
最後に家賃の高い東京に上京して一人暮らしをしたいフリーターが、賃貸を借りるためにはどうしたらよいかをお伝えします。
それはシェアハウスに住むという方法です。
と言うのも、現在都心部を中心としてシェアハウスが乱立しており、シェアハウスであれば都心の駅近に住むことが可能だからです。またシェアハウスのため、通常の賃貸物件よりも割安なことが多く、加えて、敷金や礼金が不要なところが多いです。
さらには連帯保証人をつける必要がないところも多く、預金額も示す必要がないところが多いです。(ただし契約手数料がある程度必要だったり、まとまった期間住まないと家賃が高くなることもあります。)
よってこれから東京に引っ越してくるフリーターで共同生活が気にならないのであれば、よい選択肢なのではないでしょうか。
まとめ
今回はフリーターでも賃貸契約を結ぶための方法についてみてきました。
賃貸契約に限らずですが、フリーターの場合、どうしても社会的信用が低いと見なされてしまい審査に通りにくいのが現状です。またいざ審査に通り入居できたとしても、ある程度の額の家賃を支払い続ける必要があります。
1人暮らしはメリットもありますが、貯金がしにくいなどのデメリットもあるため、自身が1人暮らしが向いているのかをきちんと判断することが必要です。またフリーターが審査に通るためにはまとまった預金額も必要なケースが多いにも関わらず、フリーターの場合貯金がしにくいという矛盾を抱えています。
さらに「フリーターの問題点」で紹介しているとおり、収入が低いということ以外にもフリーターには社会的信用度が低い、専門的なキャリアを詰めないといった問題を抱えており、これらの問題を解決するためには、正社員に就職することも1つの手です。