日本でニートの問題が表面化してから、15年以上経とうとしています。しかしながら、現在の日本における正確なニートの割合を知っている方は少ないのではないでしょうか。

また年代や学歴によって割合に特徴は見られるのでしょうか。特に最近だと、大学や大学院といった高学歴の方もでも、思うように就職できず、止むを得ず働かないままでいる方も増えています。

そこで今回は日本のニートの割合を見ていくことで、現在の日本における「働かない若者」の現状について考察していきます。

そもそもニートの定義とは?

”Not in Employment, Education or Training”の頭文字をとった和製英語です。具体的には15~34歳の、就業、家事、通学も何れもしていない人のことを指しています。

元々年齢が若者に限定されているのですね。よって35歳以上は、単に「無職」とか「無業者」と呼ばれます。無職の中にニートは内包されているのですね。

また現在の総数は、約54万人(2017年)いるとされ、年々減少をしています
参考:労働力調査(基本集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果
※当調査では、ニートのことを「若年無業者」と呼称しています。

日本のニートの割合の推移

それでは本題の割合がどれくらいかを見ていきます。まずは、ニート全体の割合の推移を見ていきます。

ニートの割合は2.1%程度

ニートの人数比率の推移

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017
割合 2.2 2.3 2.2 2.1 2.1 2.2 2.1

参考:労働力調査(基本集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果(P,15)

2017年は、2.1%であることが分かりました。100人若者がいたら、そのうち2人が働かずにいることが分かります。100人中2人がニートという現状は、多いとも少ないともどちらともとらえられるでしょう。

しかしながら、割合の推移を見ていくと、この「働かない若者」の問題は全く解決していないことが分かります。上のグラフのとおり、割合は毎年ほぼ2%台で推移しており、ここ数年変化がさほど見られないのです。

現在、世界の人口は増えているのにも関わらず、日本の人口は減少しています。特に少子高齢化が叫ばれ、今や、日本の労働人口の減少はかつてないほど進んでいます。

しかしながら割合は減ることはなく、一定数存在し続けているのです。今後も、日本の人口が減ったとしても、ニートの割合は今後も一定数存在することがうかがえます。

アメリカとの比較

ちなみに海外と比べて日本の働かない若者の割合は多いのでしょうか?少ないのでしょうか?

例えばアメリカの割合は、2016年は15%だったそうです。またOECDの加盟国の平均も15%とのことでした。

実は、日本の割合は世界と比べると低かったのですね。アメリカの方が人口が多く、日本よりも簡単に解雇されやすい環境であることも一因かもしれません。
参考:United States – Country Note – Education at a Glance 2017: OECD Indicators(P,10)

20代・30代のニートの割合の推移

次に年代別に割合に差はあるのかを見ていきます。2014年までのデータになりますが、20代、30代それぞれの割合は以下のとおりです。

20代、30代のニートの割合の推移

年/年代 20代 30代
2007 2.3 2
2008 2.3 2.1
2009 2.4 2.1
2010 2.3 2.1
2011 2.4 2.1
2012 2.6 2.3
2013 2.4 2.3
2014 2.3 2.4

参考:平成27年版 子ども・若者白書(全体版)
2009年 総務省 「人口推計」(総務省統計局) 年齢(5歳階級),男女別人口及び割合-総人口(各年10月1日現在)
2014年 総務省 「人口推計」(総務省統計局) 年齢(5歳階級),男女別人口及び割合-総人口(各年10月1日現在)

※日本におけるニートの年齢は15歳から34歳としているが、30代後半も含めて記載しています。
※20代、30代のそれぞれのニートの総数と20代、30代の総人口を元に割合を算出しています。

現在、20代よりも30代の割合が多くなっており、30代の割合が年々増えています。2014年は20代と30代の割合が逆転していますね。また人口は年々減少しているにも関わらず、どちらの年代も割合はあまり変化が見られませんでした。

ちなみに、経済協力開発機構(OECD)の調査によると、女性に限って言えば、20 代後半のニートの割合が諸外国と比べて多いという結果が出たそうです。(ただし、OECDの調査は、日本のニートのカテゴリーには含まれない「専業主婦」も含まれています。)

これは、20代後半の女性は出産をしても、保育施設が十分でなく、子どもを預けようと思っても多額な費用もかかることから、仕事を辞める選択を取ることが多いからとのことです。

また最近だと専業主婦を望む20代の女性が増えており、正社員となって一生涯フルタイムで働くことだけが正解でないと考える若者が増えています。
参考:Investing in Youth: Japan OECD REVIEW ON NEETS Executive summary and Assessment and policy options(P,7)

大卒のニートの割合の推移

さて、ここでは学歴別に割合に違いが見られるのかを見ていきます。世界で見ても、日本の高学歴化は進んでおり、大卒のみならず大学院卒の人も増えています。

高学歴である大卒者の割合が高くなるのに比例して、大卒や大学院卒の割合も増えているのでしょうか。

大卒後のニートの割合

下記は高卒後や大卒後に定職に就かず進学もしなかった割合です。

 大卒・高卒でニートである割合の推移

年/学歴 高卒 大卒
2009 5.1 12.1
2010 5.6 16.1
2011 5.4 15.9
2012 4.9 15.5
2013 4.9 13.6
2014 4.5 12.1
2015 4.4 10.3
2016 4.3 8.7
2017 4.7 7.8
2018 5 7

参考:文部科学省 平成30年度学校基本調査(P,4、7)

高卒は5%前後、大卒は10%前後、卒業後に定職に就いていないことが分かりますまた10年ほど前は、大卒の割合が高卒の2倍ほどありましたが、ここ数年拮抗してきています。その代わり、大卒者に関しては、大卒後に正社員に就職した割合が年々高くなっています。

しかしながら、大卒直後という限定を外すと、違った傾向が見えてきました。

ニートの学歴構成

下記は2012年までの調査結果になりますが、学歴別のニートの割合です。

学歴別ニートの割合の推移

学歴/年 1992 1997 2002 2007 2012
中卒 28.8 25.2 28.1 23.8 21.3
高卒 58.4 56.1 51.2 50 52.3
短大・専門卒 6.9 9.6 9.5 12.7 11.3
大卒・大学院卒 5.8 9 11.2 13.1 14.6

参考:若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状② ― 平成 24 年版「就業構造基本調査」より ― (P,13)

2012年はニートのうち高学歴と呼ばれる大卒・大学院卒であった割合は14.6%であったことが分かりました。この大卒の14.6%という数字は、今やニートの7人に1人が大卒であるということです。

また他の学歴の割合は減少もしくは横ばいであるにも関わらず、大卒の割合は年々増えています。大学に進学する人が増えている中、ニートの割合も比例して増えているようです。

よって高学歴だから必ず職に就けるということはなく、今後もニートの高学歴化が進んでいくことが予想されます。また大学卒業直後は就職できたとしても、その後正規雇用されている状態が続くわけでない可能性も十分ありえるということがうかがえます。

日本のニートは高学歴

また諸外国と比べても日本のニートは学力が高いことが分かっています。OECDが実施した PISA(OECDが調査した各国生徒の学習到達度調査)において、日本の無職の若者の数学的リテラシー、読解力、科学リテラシーの成績は何れも上位だったそうです。

つまり日本では、ニートと学力の関係性はないことを意味し、学力が高かったとしても(高学歴であったとしても)ニートになってしまう環境であることを示唆しています。

ちなみに、この調査では若者の貧困率についても取り上げており、日本の若者(18~25歳)の生活保護受給率は約0.5%のみであることが分かりました。また若者の貧困率は20%近くに達するとされており、これは他の年代の貧困率に比べて高い数字だったそうです。

若者の貧困率が高い要因としては、日本は諸外国と比べて、高齢者への福祉制度は充実しているものの、若者に対しての経済的支援が十分でないことが挙げられています。

つまり、日本では働かない若者への公的な経済的支援が十分でなく、働かないと貧困に陥りやすい環境であることがうかがえます。
参考:Investing in Youth: Japan OECD REVIEW ON NEETS Executive summary and Assessment and policy options(P,9)

※ちなみに現在、フリーターにおいても高学歴化が進んでいます。フリーターの年代や学歴における割合について知りたい方は「大卒や30代フリーターの割合」をご覧ください。

東大卒でニートの割合

先ほど高学歴でもニートになりえるとお伝えしましたが、日本の高学歴の最高峰である東大卒であったとしてもそれは然りなようです。

2016年度の東大の卒業生の進路を見てみると、全卒業生3,140人のうち、進学や就職をしなかった人が420人に上ったそうです。割合に換算すると、約13.4%になります。
※ただし東大卒業後、起業をしたなど他の理由も含まれます。

今や、高学歴の最高峰である東大生であったとしても卒業後、定職に就けない状況なのです。
参考:東京大学の概要 資料編 2017(P,10)

発達障害を持つニートの割合

実は、ニートの中に一定数、発達障害を持っている人が含まれていることが分かっています。

そもそも発達障害とは、

  • 自閉症
  • アスペルガー症候群
  • 学習障害
  • 注意欠陥多動性障害

といった障害の総称です。
参考:文部科学省 特別支援教育について 発達障害とは

現在、ニートに占める発達障害者の割合は諸説あり、厚生労働省の調査結果では2〜3割強とされていますが、約8割に上るとも言われています。よって、発達障害者への就労支援を行うことが結果的にニートの割合を減らすことにもなるとも思われます。

参考:働く広場 2017.12(P,2)

まとめ

ニートの割合は100人に2人程度とここ数年横ばいであることが分かりました。また、20代よりも30代の方が割合が多いことが分かりました。

さらに、大卒や大学院卒の高学歴なニートの割合が増えており、ニートの高年齢化と高学歴化が顕著になっています。(ちなみに高学歴ニートには他の層とは異なる特徴や高学歴を活かした就職方法が存在します。詳しくは「高学歴ニートやフリーターの特徴と脱出方法」をご覧ください。)

ニートになった理由は人それぞれであり、理由があって止むを得ず、現在働いていない人もいるでしょう。しかしながら、ニートでいる期間が長くなればなるほど、生活する上で不便さが待ち受けているのも実情です。

なんと言っても収入面が安定しないことが不便さの1つです。ニート本人が高齢化するということは、本人の親も高齢化していることを意味し、将来の収入面の不安定さはより顕著になっているのです。

また、いざ正社員へ就職しようと思っても、空白期間が長ければ長いほど就職することが難しいのが現状です。年齢が増せば増すほど、採用されるためのハードルは上がっていきます。(ニートでつづけることのリスクについては「ニート増加の問題点と原因」でも説明しています。)

    通常、経歴に空白がある方の正社員への就職は非常に困難を極めます。1人で準備を進めていても、思うようにいかないことも大いにあるでしょう。その場合は、未経験からでも積極的に就職支援をしてくれる専門のサービスが存在しますので、そのようなサービスを利用するのも1つの手です。