通常フリーターは社会保険には加入できないと言われているため、病気やけが、出産といったいざ働けなくなったという時に困ってしまうと思われる人も多いのではないでしょうか。
しかしながら、ある一定の条件をクリアすると、フリーターであったとしても社会保険に加入することが可能となります。
よって今回は、フリーターであったとしても加入できる条件や加入できた場合のメリットについて説明します。またフリーターの場合、複数の職場を掛け持ちして働いていることも多々あります。複数の職場を掛け持ちしている場合、加入にあたって留意すべき点があります。よって複数の職場を掛け持ちしている場合の留意点についてもお伝えします。
社会保険とは?
以下の公的な社会保障の総称であり、いわゆる企業に勤める正社員の方が加入している公的な社会保障制度のことを指します。
一般的に正社員や正職員が加入する公的医療制度のことです。これにより医療機関にフリーターの年齢であれば、3割負担でかかることができたり、怪我や病気で休職をした場合の給付金や、出産や育児休暇中の給付金を受け取ることができます。
一般的に正社員や正職員が国民年金に加えて加入する年金のことです。これにより老後の年金額が国民年金しか払っていない人よりも多くなります。また厚生年金は労使折半といって、勤め先も一部支払いを負担してくれています。
2000年に導入された比較的新しい制度であり、下記の条件に当てはまった介護が必要になった際に、1割の負担で医療や介護サービスを受けられる仕組みのことです。なお加入者は40歳以降であり、支払いも40歳からはじまります。
失業した後に再就職をするまでの生活費(所謂「失業手当」)や、職業教育訓練を受けた場合のかかった費用を受け取ることが出来る制度のことです。実際に失業手当を受け取る際には、ハローワークと呼ばれる公共職業安定所に行って所定の手続きを行う必要があります。
業務中や通勤中に災害に遭遇した場合に、本人や遺族に補償金が支払われる制度のことです。特徴は全額事業主(企業)が全額支払うことになっているということです。
また狭義の意味ではこの中の「健康保険」「厚生年金」の2つを指して、社会保険ということも多々あります。
※広義の意味→「健康保険」「厚生年金」「介護保険」「労災保険」
※狭義の意味→「健康保険」「厚生年金」
フリーターにおける加入条件
さてここからは本題のフリーターでも社会保険に加入するための条件を紹介します。
健康保険・厚生年金
両者に共通して2016年10月からは下記の条件を満たす場合は、フリーターであったとしても加入することが可能になりました。
- 1週間あたりの決まった労働時間が20時間以上である
- 1か月あたりの決まった賃金が88,000円以上である
- 現在、すでに別の勤め先で支払いを行っていない
- 学生でない。(ただし夜間、定時制の方は除く)
- 雇用期間が1年以上の予定である
- 70歳未満である
- 会社の従業員数(正社員など)が、501人以上である
さらに、2017年4月からは従業員数が500人以下の職場で働くフリーターも労使で合意されていれば、加入が可能となっており、今後も規制の緩和は進むものと思われます。
介護保険
雇用形態に関係なく40歳以上の日本国民であれば誰でも徴収されることになっているため、アルバイトであったとしても加入することが可能です。
雇用保険
下記の基準を満たす方はフリーターであったとしても加入することができます。
事業主(企業)は、上記条件を満たす労働者を雇い入れた際には、フリーターであったとしても、公共職業安定所(ハローワーク)に申請をする必要があります。
労災保険
フリーターであったとしても、正社員と同じように給付を受けることができます。給付金額も正社員と同様です。
参考:厚生労働省 労災保険に関するQ&A
まとめ
ここで再度フリーターであったとしても加入できる条件をまとめて紹介します。
- 健康…一定の条件を満たせばフリーターでも加入が可能
- 厚生年金…一定の条件を満たせばフリーターでも加入が可能
- 介護…40歳以上の誰しもがフリーターでも加入が可能
- 雇用…一定の条件を満たせばフリーターでも加入が可能
- 労災…フリーターでも加入が可能
フリーターが社会保険に加入するメリット
ここでは特にフリーターが「健康保険」と「厚生年金」に加入するメリットについて説明します。
健康保険に加入するメリット
フリーターでも傷病手当金や出産手当金といった給付金が受け取ることができます。
よって万が一、病気・けがや出産により休職をしなければならかったとしても、一定期間賃金の2/3程度の給付金を受け取ることができます。
厚生年金に加入するメリット
まず国民年金しか払っていなかったときよりも老後にもらえる年金額が増えるというメリットが挙げられます。
次に厚生年金の中には、障害を患い日常生活を送ることができなくなった場合に備えて「障害厚生年金」という年金が含まれています。そして障害厚生年金により、最低月額約49,000 円が給付されます。
また加入者が万が一死亡した場合は、遺族に「遺族厚生年金」が給付されます。国民年金に入っていても「遺族基礎年金」が給付されますが、遺族基礎年金は18 歳未満の子がいない場合は配偶者には支給されません。しかし遺族厚生年金の場合は 18 歳未満の子がいない場合も配偶者に支給されるという国民年金と比較した際のメリットがあります。
両者に共通した加入するメリット
職場が折半して月々の支払いを行ってくれます。そのため、フリーター自身で国民健康保険と国民年金に加入をし、支払いをするよりも1/3~1/2安く済むケースが多いです。(詳しいシュミレーション結果については「フリーターの保険証の作り方」をご覧ください。)
また同じ金額を支払うのであれば、両者に加入した方が手厚い補償を受けられるケースが多いです。
フリーター自身が払う社会保険料はいくら?
さて仮に上記にて説明した加入条件に合致し無事に加入ができた場合、フリーター自身でどれくらい支払いを行わないといけないのでしょうか?
ここでは、東京都在住の年収が150万円(月収125,000円)のフリーターの場合の、月にかかる支払い額を計算してみました。なお、ここでは掛け持ちはしておらず、一か所の職場から収入を得ているフリーターをモデルケースとしています。
※実際の支払金額は控除などによって変動する場合があります。
参考:全国健康保険協会 平成30年4月分(5月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表 東京都
厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク 平成30年度の雇用保険料率について
健康保険料
月額報酬によって等級が定められており、等級によって支払い額が決まります。
月額報酬が125,000円の場合、等級は9となり、支払い額は6,237円/月となります。
厚生年金
月額報酬によって等級が定められており、等級によって支払い額が決まります。
月額報酬が125,000円の場合、等級は6となり、支払い額は11,529円/月となります。
介護保険料
0円/月
(フリーターの定義は15~34歳までとなっている一方、加入年齢は40歳以上のため、フリーターの場合支払いの対象外となるため。)
雇用保険料
125,000円×3/1000=375円/月
労災保険料
0円/月
(事業主である勤め先が全額負担するため。)
総計
18,141円/月
掛け持ちしているフリーターの場合の加入方法
フリーターの中には、1つの職場だけでなく複数のアルバイトを掛け持ちして働いている人も多いですが、アルバイトを掛け持ちして働いているフリーターであったとしても加入できるのでしょうか?また加入する際に気をつけるべきことはあるのでしょうか?
ここでは複数の職場を掛け持ちしているフリーターの方向けに、複数の職場を掛け持ちする場合に気をつけないといけない点について解説します。
健康保険、厚生年金における留意点
掛け持ちしているそれぞれの職場のいずれもが加入条件を満たしていた場合は、掛け持ちしているそれぞれの職場に対して、「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・2以上事業所勤務届」を提出する必要があります。
参考:日本年金機構 複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き
雇用保険における留意点
掛け持ちしているそれぞれの職場のいずれもが加入条件も満たしている場合は、掛け持ちしている職場のうち給料を多くもらう方の職場にて加入することになります。よって自身で給料を多くもらっている職場の方に加入の意思を伝えましょう。
※保険とは異なりますが、税金についても掛け持ちしている場合は自身で確定申告を行う必要があります。詳しい条件については「フリーターの税金」にて解説しています。
まとめ
現在、フリーターであっても、社会保険への加入条件が緩和されています。また人手不足が予想される中で、今後も加入条件はより緩和されることが予想されます。
よって加入対象者は今後も増えていくことが予想され、加入することによるメリットも多いことから、フリーターにとってはよい傾向であると言えます。
一方、フリーターの場合、複数の職場を掛け持ちすることで収入を得ているケースが多くあるため、掛け持ちしている職場それぞれに重複して手続きを行ってしまうなどして、職場に迷惑をかけないように気をつける必要があります。
最後に正社員の場合は、何も考えずとも今回紹介したような社会保険に入ることになり、今だけでなく老後も含めて手厚い恩賞を受けることができます。さらに支払いの約半分を勤め先があなたの代わりに支払ってくれるため、サラリーマンにとってはお得な制度なのではないでしょうか。
将来にわたって金銭的保障を確保したい、もしくは、病気やけが、出産などで十分に働けなくなってしまった際の恩賞を手厚く受けたい人は、あまり考えなくても半ば自動的に加入することになる正社員へ就職するのも1つの手です。