フリーターの場合正社員と異なり、自身で保険料や税金をどれくらい払わないといけないのかを把握しないといけないことが多く、管理が大変です。そのうちの1つである、国民健康保険も然りで、フリーター自身で申請の手続きや払い込みをしないといけません。
しかしながら学校でこれらの支払い額や加入手続き方法について教えてくれる機会は少なく、自身の支払い額や保険料の内訳について把握していない人も多いのではないでしょうか。またフリーターの月収によっては高いため払えない…ということもあるかもしれません。
そこで今回はフリーターが支払うべき国民健康保険料について解説をします。加えてもし保険料が高いため払えない場合、保険料の支払いを免除できる方法があるのかについても見ていきます。
国民健康保険とは?
まずここでは「国民健康保険」について解説します。
国民健康保険とは地方自治体が運営する月々決まった保険料を納める代わりに医療機関への自己負担料が一定割合で済む制度のことです。加えて病気やけが、出産などで休職した場合に一定の給付金をもらえる制度のことです。
※ちなみに日本では国民健康保険以外にも下記の何れかに入らないといけないという決まりがあります。(ただし生活保護受給者など一定の条件を満たす場合は加入対象外となります。)
- 国民健康保険…自営業や無職者などが加入
- 健康保険(社会保険)…主に会社員が加入
- 共済組合…主に公務員や私立学校の教職員が加入
- 船員保険…船員が加入
フリーターは上記のうち「国民健康保険」か「健康保険(社会保険)」に加入することになります。
そのうち多いのは国民健康保険です。なぜなら健康保険(社会保険)の場合、以下のように加入できる条件が定められており、フリーターの場合は下記の条件に当てはまらないことが多いからです。
- 1週間あたりの決まった労働時間が20時間以上
- 1か月あたりの決まった賃金が\88,000以上
- 雇用期間が1年以上
- 勤め先の会社の従業員数(正社員など)が501人以上、もしくは労使でフリーターの加入が合意されている
※加入条件が、1か月あたりの給料\88,000を年収に換算した場合、約106万円になることから、よく「106万円の壁」と呼ばれています。
ちなみに健康保険(社会保険)は勤め先の企業が費用を一部負担してくれるため、国民健康保険料よりも1/3~1/2程度済む場合が多いです。また健康保険の方が同じ支払い額に対して補償範囲が広いというメリットもあります。
(健康保険料と国民健康保険料の比較や、健康保険の特典については「フリーターでも保険証は作れる?」をご覧ください。)
フリーターの国民健康保険料はいくら?
次にフリーターが支払うべき国民健康保険料はどれくらいになるのかを解説します。
まず国民健康保険の内訳として医療費に使われる「医療分」、後期高齢者の支援金に使われる「後期高齢者支援金分」、40歳以上65歳未満の人が支払う「介護分」が存在し、それぞれの合計値が実際の支払額となります。
参考:東京都福祉保健局
またそれぞれの内訳の算出方法については市町村毎に異なっています。例えば2018年度の東京都中央区の場合は、以下のようにそれぞれ均等割と所得割から構成されています。また年間の限度額も以下のように定められています。
医療分 | 後期高齢者支援金分 | 介護分 | |
均等割額 | 1人あたり39,000円 | 1人あたり12,000円 | 一人あたり15,600円 |
所得割額 | 加入者全員の賦課のもととなる所得金額×0.0732 | 加入者全員の賦課のもととなる所得金額×0.0222 | 第2号被保険者全員の賦課のもととなる所得金額×0.0106 |
※年間限度額 | 58万円 | 19万円 | 16万円 |
※上記の「賦課のもととなる所得金額」とは、前年の所得と山林所得金額、株式・長期(短期)譲渡所得金額等の合計から必要経費(給与所得控除など)を差し引き、さらに住民税基礎控除額33万円を控除した額です。
参考:東京都中央区 国民健康保険の保険料
国税庁 給与所得控除
国民健康保険料が払えない場合の免除方法
国民健康保険は病気やけがの際にかかる治療費を負担してくれる面では大きな効力を発揮しますが、当たり前ですが無料では加入できません。よってフリーターの中には負担額が高いと感じて、支払いたくない(支払えない)という人もいます。(特に健康なうちは病院にかかる機会も少ないため、なおさら高い!と感じる人が多いのではないでしょうか。)
毎年の支払い額が高いため払えないフリーターの場合、支払いを免除といった優遇措置はあるのでしょうか?ここでは毎年の国民健康保険料が高いため払えない場合の免除方法について解説します。
家族が加入している健康保険の扶養に入る
これは家族が健康保険や共済組合に入っていることが前提になりますが、フリーターが健康保険加入者の扶養者となることで、自身の国民健康保険料の支払いを免除することができます。
これはフリーターの年収が130万円未満であり、扶養者の年収の半分(別居の場合は扶養者からの仕送り額未満)である場合、適用されます。よってフリーターの中には上限金額を超えないように勤務時間を調整している人もいます。
2016年10月より月収\88,000以上であり、1ヶ月の労働時間が20時間以上である場合、フリーターでも勤め先の健康保険に入ることが可能となりました。
よって本来であれば年収130万円までは家族の扶養に入り、支払いが免除できるものの、月収が\88,000を超えて他の条件も満たすと、フリーター自身にて加入しなければならないことも。
よって勤め先の企業に自身の勤務条件の場合は、勤め先の健康保険に入ることになるのかを確認することが必要です。
減免制度を利用する
もし家族の扶養に入ることができず、フリーター自身にて国民健康保険に加入する場合はどのような支払いの免除方法があるのでしょうか?
国民健康保険の場合は、下記の条件に当てはまった場合は支払いを一部免除してくれます。
- 国民健康保険の加入家族含めた所得が一定額以下の場合
- 勤め先の企業が倒産した、または解雇された場合
- 災害や事故などにあい、生活を送るのが困難になった場合
上記のうち、「所得が一定額以下」の場合とはどのような場合を指すのでしょうか?
例えば東京都中央区の場合は国民健康保険の所得割について下記のような軽減措置をとることで支払いを一部免除してくれます。
所得基準 | 基礎分保険料 | 後期高齢者支援金分保険料 |
加入者全員の2017年中の所得金額が33万円以下 | \39,000→\11,700 | \12,000→\3,600 |
加入者全員の2017年中の所得金額が33万円+(27,5万円×加入者数)以下の世帯 | \39,000→\19,500 | \12,000→\6,000 |
加入者全員の2017年中の所得金額が33万円+(50万円×加入者数)以下の世帯 | \39,000→\31,200 | \12,000→\9,600 |
参考:東京都中央区 国民健康保険料の軽減・減免
※上記の他に、40歳以上になると徴収される介護保険料も所得額に応じて減免されます。
上記で記載した減免額は、減額される割合が上から7割、5割、2割であることからよく「7割・5割・2割軽減」と言われています。
もし毎年の支払い額を一番軽減したい場合、1人暮らしのフリーターの場合は、年収を98万円以下に抑えると支払いを1番抑えることができます。(と言いつつ年収を98万円以下に抑えて1人暮らしするという選択肢はあまり現実的ではありませんが…。)
またここまで毎年の支払い額が高いため払えない場合の支払いの免除の条件について紹介しましたが、自身の年収だといくら免除されるのかについてはフリーター自身にて計算する必要はなく、通常免除の申請を行ったフリーターの所得額に応じて、市町村側が減免額を計算してくれます。
※ちなみに国民健康保険以外にも、税金や年金を支払う必要がありますがそれらについても、例えば年金についても同様に親の扶養に入るなど免除の方法や条件が決まっています。条件の詳細については「フリーターの年金、税金、国民健康保険の免除制度」をご覧ください。
フリーターの国民健康保険料は高いのか?金額を計算
ここで1人暮らしのフリーターが払わないといけない国民健康保険料を算出してみました。
なお、フリーターの年齢の定義は15~34歳のため、介護分は支払わなくてよいものとし、このフリーターは東京都中央区に住んでいるものとします。また前年の所得は勤め先からの給料のみとします。また所得に応じて先ほどお伝えをした支払いの免除や軽減が適用されるものとします。
年収100万円の場合
まず均等割分は本来39,000円ですが、5割の減免が適用されるため19,500円となります。
次に所得割額を算出します。
この場合、年収100万円から給与所得控除65万円と住民税基礎控除額33万円を引くと、賦課のもととなる所得金額は2万円となります。
よって20,000×0.0732=1,464円となり、合算すると、20,964円/年となります。
まず均等割分は本来12,000円ですが、5割の減免が適用されるため6,000円となります。
次に所得割額を算出すると、20,000×0.0222=444円となります。
合算すると、6,444円/年となります。
上記で求めた医療分と後期高齢者支援金分の合算金額は、27,408円/年となります。
年収150万円の場合
- 均等割…39,000円
- 所得割…(年収150万円-給与所得控除65万円-住民税基礎控除額33万円)×0.0732=38,064円
合算値…77,064円/年
- 均等割…12,000円
- 所得割…(年収150万円-給与所得控除65万円-住民税基礎控除額33万円)×0.0222=11,544円
合算値…23,544円/年
合計金額:100,608円/年
年収200万円の場合
- 均等割…39,000円
- 所得割…{年収200万円-(給与所得控除額 年収200万円×30%+18万円)-住民税基礎控除額33万円}×0.0732=65,148円
合算値…104,148円/年
- 均等割…12,000円
- 所得割…{年収200万円-(給与所得控除額 年収200万円×30%+18万円)-住民税基礎控除額33万円}×0.0222=19,758円
合算値…31,758円/年
合計金額:135,906円/年
ここまで年収毎のフリーターの支払い額について紹介しましたが、やはり減免されないと、支払い額が一気に2桁になってしまうため、高い!と感じてしまうのかもしれません。
まとめ
今回はフリーターにおける国民健康保険料が高いため払えない場合の支払いの免除策について説明しました。
フリーターの場合、正社員と異なり、自身にて国民健康保険や年金、税金の支払いを自身にて管理しなければなりません。
よってこれらの支払いを家計管理の中に入れておらず、いざ支払いの際に保険料が高いため払えない…!ということがないようにしたいものです。
また今回解説したように、毎年の支払い額が高いため払えないという場合は、支払いを免除する方法がいくつか存在します。ただしいずれの方法も年収額の制限があるため、制限額を超えないように勤務時間を調整する必要があります。
最後に正社員の場合は入社と同時に勤め先の企業が代理で健康保険や、厚生年金に加入手続きを行ってくれます。さらに税金についても給料から勝手に天引きされるため自身で管理する必要がありません。よって、自身にてこれらの支払いを行うことが大変で煩わしいという場合は、フリーターではなく正社員への就職をおすすめします。