一般的にはフリーターは国民健康保険(=国保)に加入し、正社員は健康保険(社会保険=社保)に加入します。
フリーターは非正規雇用の一種であるため、健康保険(社会保険)には加入していない場合が多いです。しかしながらフリーターであったとしても加入できた場合、さまざまなメリットを享受することができます。よって持てるようであれば持っておいた方がよいものです。
今回はフリーターによる保険証の作り方について解説していきます。また持っていない場合はどのような影響があるのかについても解説します。
「保険証」の内訳
まず一口に「保険証」と言っても、いくつか種類が存在し、年齢や職業により加入できるできないが存在します。
- 健康保険(いわゆる社会保険のことであり、さらに会社員が加入できる「組合健保」、「協会けんぽ」と公務員や私立学校職員が加入できる「共済組合」に分類されます。)
- 後期高齢者医療制度(75歳以上の方と65歳以上で一定の障がいがある方が加入)
- 国民健康保険(上記以外の方が加入)
ここからはさらに、フリーターの年齢の定義である「15~34歳」の人が加入できる「健康保険」(社保)と「国民健康保険」(国保)の特徴について解説します。
健康保険(社保)とは?
健康保険(いわゆる「社会保険」や「社保」)とは、端的に言うと民間企業の会社員が加入する公的医療保険のことを指します。
特徴として、事業主である企業と従業員が費用を折半して納めることが挙げられます。企業と従業員が折半して費用を負担する代わりに、従業員が病気やけがで診療を受けた際や治療にかかった費用の一部を、補償してくれるのです。
国民健康保険(国保)とは?
国民健康保険(以下、「国保」と記載)とは、上記で説明した健康保険や公務員が加入する共済組合に加入できない人が加入する公的医療保険のことです。
社保や後期高齢者医療制度に加入していない人は、原則この国保に加入しなければなりません。(よってフリーターの多くがこの国保に加入することになります。)※ただし生活保護受給者は対象外となっており、生活保護対象者は自己負担なしで医療診療を受けることができます。
また最近外国人滞在者による不正請求が話題となっていますが、外国人でも原則3ヶ月以上滞在する場合は加入をしなければなりません。同日に外国人でも在留目的が医療診療や外交である場合は滞在期間に関係なく、加入する必要があります。
参考:東京都福祉保健局 国民健康保険に加入する人
フリーターが保険証(社会保険証)を持っているメリット
ここでは、フリーターが保険証を持っていることのメリットについて見ていきます。
※なおこれ以降、「保険証」とは国民健康保険証ではなく、会社員とその扶養者が持つことができる「健康保険証(社会保険証)」のことを指します。
補償が手厚い
フリーターが保険証を持った場合、加入対象者は会社員のため、病気やけが、出産をして、会社を休まざるをえなくなった際にも、給付金が得られるというメリットがあります。
例えば、国保では制度化されていない「出産給付金」や「傷病手当金」を受け取ることができます。「出産給付金」とは出産のために休職をしていた期間(妊娠が判明してから出産後56日目まで)、1ヶ月分の給料の約2/3を給付金として受け取ることができる制度のことです。
※もちろん国保でも「出産一時金」といって、出産した際に1人につき42万円もらえる制度がありますが、社保の場合は、出産一時金のほかにこの出産給付金も受け取ることができます。これは国保の加入対象者は自営業者なため、「産休」という概念がないためです。
また勤め先を退職をしており、会員資格が失効していたとしても、直近3ヶ月以上または3年間に1年以上加入していた場合は、退職後半年以内であったとしても出産給付金を受け取ることができます。よって出産のために会社を退職した場合も、条件を満たせば出産給付金を受け取ることができるのです。
参考:全国健康保険協会 出産で会社を休んだとき
次に「傷病手当金」とは、けがや病気により連続して3日以上会社を休んだ場合に最大1年半の間、1ヶ月分の給料の約2/3を給付金として受け取ることができる制度のことです。
傷病手当金により、長期間にわたり病気やけがで休職を余儀なくされても、生活が送れる状態になるのです。国保でも医療費が高額になった際には給付金を受け取ることができる制度があるものの、給付金額は少なく、働けなくなり収入がない中、給付金だけでは日常生活を送ることができないことから、傷病手当金を受け取れることもメリットの1つです。
参考:全国健康保険協会 病気やケガで会社を休んだとき
割安で施設を利用できる
勤め先が加入している組合にもよりますが、その組合が持つ保養所や提携している施設が割安で使用することが可能となります。
例えば勤め先が「東京都情報サービス産業健康保険組合(TJK)」に入っている場合、保養所が割安で使用できるほか、フィットネスクラブやグラウンドが法人割引価格にて利用することができます。また健康に関するマラソンといったイベントも開催しており、加入者であればだれでも参加することが可能です。
参考:東京都情報サービス産業健康保険組合 加入のメリット 多種多様な健康増進事業を利用できます
支払い額が抑えられる
社保の場合、事業主である勤め先の企業も本来本人が支払うべき額の一部を折半して支払ってくれます。よって国保に入るよりも、自身の負担額が安くなることがあるのです。
例えば東京都江戸川区在住の年収150万円のフリーターの場合、月々の支払い額をシュミレーションしてみると、11,040円/月となります。(年収毎の保険料は「フリーターの国民健康保険料」でも解説しています。)
参考:江戸川区 国民健康保険料シミュレーション
しかしながら社保に入っていた場合、控除額を差し引く前でも月々の自身の負担額は6,237円/月となります。
参考:全国健康保険協会 平成30年4月分(5月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
勤め先の企業も費用を負担しているため、自身の負担額は安く済むことが多く、費用を抑えながらも充実した保障を受けることができるのです。
フリーターの社会保険証の作り方
ここまでフリーターであったとしても社保に入るべきメリットをお伝えしてきましたが、フリーターであったとしても社保に入るにはどうしたらよいのでしょうか?
フリーターの保険証の作り方は2つ存在します。ここではまだ保険証を持っていない方向けにその2つの作り方について紹介します。
勤め先の健康保険組合に加入する
まずフリーター自身が勤め先の組合に入る方法が挙げられます。しかし加入を希望したからと言って誰でも入ることができるわけでなく、下記の条件を満たす必要があります。
- 1週間当たりの労働時間が20時間
- 1か月あたりの給料が88,000円以上
- 1年以上の雇用予定
- 勤め先の会社の従業員数(正社員など)が、501人以上である必要があります。
※2017年4月からは従業員が500人以下であっても労使でフリーターの加入が合意されている場合は入ることができます。
参考:厚生労働省 平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!(社会保険の適用拡大)
フリーターであったとしても、まとまった期間と時間働いている場合は上記の条件に合致するので、まだ保険証を持っていない場合や雇用される際には、社保に入ることができないか勤め先にかけあってみることをおすすめします。
社会保険加入者の被扶養者となる
もう1つの作り方ですが、フリーターが親や配偶者などで社保加入者の被扶養者となる方法が挙げられます。
被扶養者の条件としては、実家暮らしのフリーターの場合、自身の年間の収入が130万円未満であって、家族全体の収入の半分未満である必要があります。
※仮にフリーターの収入が世帯収入の半分以上であったとしても、加入者の収入を上回らない場合であれば、条件に当てはまる可能性があります。
また実家暮らしでなかった場合でも、フリーター自身の収入が年間が130万円未満であり、家族からの援助による収入額より少ない場合には、被扶養者となることができます。
参考:全国健康保険協会 被扶養者とは?
よって扶養者となることで社保に入りたい場合は、年収が130万円未満になるように働く時間を調整しましょう。
※ちなみにもし自身で社保に入る場合、年収150万円のフリーターの場合は保険料は6,237円/月になり、他にも厚生年金や雇用保険料などがかかってきます。詳しいかかる費用については「フリーターにおける社会保険」をご覧ください。
※また社会保険以外にも年金や税金も払う必要がありますが、それらの免除方法も知りたい方は「フリーターの年金・税金・国民健康保険の免除制度」をご覧ください。
フリーターの国民健康保険証の作り方
一方社保ではなく、国保に入る場合はどのような手続きが必要なのでしょうか?
まず国保は住民票の登録がある市区町村役場に行って行う必要があります。(その際は必ずマイナンバーカードと身分証明書も持って行きましょう。)
加えて以下の何れかの書類を合わせて持参してください。
- 社会保険資格喪失証明書(元々勤めていた職場から受け取ります。)
- 退職証明書 (これも元々の勤め先に言えば発行してくれます。)
- 離職票
- 源泉徴収票(退職日が記載されているものが必要です。)
- 社会保険の資格喪失日がわかる書類(家族の社保の扶養に入っていた場合)
また必ず以前加入していた社保の加入期限の14日以内に申請を行う点に注意が必要です。
保険証を持っていないフリーターはどうなる?
ここまでフリーターの保険証の作り方について紹介しましたが、社保に加入できずに、また国保の加入手続きも行っておらず、いずれの保険証も持っていない場合はどのような影響が出るのでしょうか?
高額な医療費の負担
もし国保にも加入していないとなると、医療機関にかかっても全額自己負担となってしまいす。(ちなみに社保、国保関わらず、加入している場合は、通常フリーターの年齢(15~34歳)だと3割の自己負担で済みます。)
また病気やけが、出産などで働けなくなった際の時の給付金も受け取ることができません。長期にわたる病気やけがの場合、働くことも難しくなることから、生活費を稼ぐことができず、さらに医療費が日々の生活を圧迫してしまいます。
命にもかかわることですので、いずれの保険証を持っていないという状態は避けたいものです。
滞納料の徴収
社保に関しては、加入している勤め先の給料から毎月自身の負担額が勝手に天引きされますが、国保に入っている場合は、自分で支払いを行う必要があります。
しかし支払いが滞ってしまうと、まず住んでいる市町村から督促状が送られてきます。また滞納してから1年半を経過すると、給付金の差し止めが行われたり、給付金の一部が滞納料に充当されます。さらに滞納が続くと、財産の差し押さえと段々と処分が重くなっていきます。また滞納している間、医療機関にかかっても全額自己負担を強いられることもあります。
参考:東京都福祉保健局 保険料を納めないでいると
まとめ
今回は、フリーターの保険証の作り方や持っている場合のメリットや、反対に持っていない場合のデメリットについてお伝えしました。
健康で病院にかからないときは、保険証を持っているメリットや費用を負担する意義が分からなくなることもあるかもしれません。しかしいざ病気やけがで働けなくなった場合に保険証を持っていることは自分の生活を守る盾となります。また社会保険の場合、国保の負担額に比べて補償の範囲が広がります。
フリーターといった非正規雇用者でも昨今、社保に加入するハードルは低くなっており、持っている人も増えているものの、やはり社保に加入するための労働時間や給与額など一定の条件は変わらず存在しており、条件を満たさないと加入することができません。
また家族の誰かしらが社保に加入している場合、その家族の被扶養者になることもできますが、一方で被扶養者となるには年収の上限が存在するため、フリーター自身で十分な生活費を稼ぐことが難しくなります。よって生活費がかつかつで、健康管理に費用を避けないといった本末転倒な事態にもなりかねません。
よって被扶養者になることで金銭的デメリットを感じる人は、半ば強制的に加入が可能な正社員になり、保険証を持っていながらも収入の制限をなくすことも1つの手であると考えます。