フリーターはパートやアルバイトといった非正規雇用のため、一般的に年収が正社員に比べると低く生活費の捻出が大変なことがあります。一方、日本に住んでいる以上、何かしらの年金や社会保険に入らないといけないですし、収入がある場合は税金を払わないといけません。
しかし収入の問題でこれらの社会保険や税金に関しては、払えない場合の免除制度が存在します。
そこで今回はフリーターが保険や税金を払えない場合の免除制度について解説します。またもし税金などが払えずに未納してしまった場合、どのような影響が出るのかについても見ていきます。
フリーターが払わないといけない社会保険
まずここではフリーターが払わないといけない社会保険の種類について見ていきます。
医療保険
医療保険は、保険料を支払う代わりに医療診療費用を一定割合の費用で受けることができる制度のことです。
また病気やけがをして高額な治療費がかかる場合は、一定額以上の費用が支給されたり、出産の際には出産一時金が付与されます。
この医療保険は、被保険者の雇用形態によりことができる保険が決まっています。フリーターの場合は、通常市町村と都道府県が管轄している「国民健康保険」または民間企業の会社員が入る「健康保険」に加入することになります。
ちなみに健康保険の方が給付金の範囲が広くなっており、病気やけがで休職を余儀なくされた場合は「傷病手当金」が、出産のために休職する場合は「出産手当金」が一定期間給付されます。
この健康保険に入ることができる条件は、1週間当たりの労働時間が20時間以上で、1ヶ月あたりの給料が88,000円以上となっています。さらに雇用期間は1年以上の長期間であり、勤め先の企業の従業員数が501人以上(労使にて合意が取れていれば、500人以下の企業でも加入可能)と制限があります。
年金
年金とは、現役世代の人が支払った保険料を高齢者の生活費補てんのために高齢者に対して納める制度のことです。20歳を超えた人は何れかの年金に加入しなければなりません。
フリーターの場合は通常「国民年金」に加入することになりますが、勤め先の企業の加入条件に合致する場合(前述の健康保険への加入条件と同様)であれば、「厚生年金」に加入することができます。
厚生年金の方が実際の支払い額は高いものの、企業が一部費用を負担をしてくれています。また将来高齢者になってもらえる年金額も国民年金より厚生年金の方がおおよそ2倍以上と高く設定されています。(詳しい厚生年金のメリットについては「フリーターの社会保険加入のメリット」をご覧ください。)
その他
その他、40歳以上の場合は介護保険料も徴収されることになります。また「雇用保険」といって失業して再就職をするまでの生活費が保障されたり、職業教育訓練を無償で受けることができる制度が存在します。
そしてこの雇用保険については1週間の労働時間が20時間以上である場合は、フリーターであったとしても加入しなければならないことになっています。(給与から天引きされます。)
フリーターが払わないといけない税金
次にフリーターが払わないといけない税金の種類について解説します。
住民税
住民税は年収が100万円以上の場合、年収額に応じて自身が住んでいる都道府県と市町村それぞれに対して納めなければならない税金のことです。
前年度の年収額に応じて、今年度支払うべき税額が決められます。よって就労2年目で1年目と給料額が同じ場合、住民税分手取り額が減ってしまう現象が存在します。
※なお住民税の税率は課税所得の10%です。加えて均等割といって所得に関係なく誰もが一定額徴収されます。詳しい計算式については「フリーターの住民税はいくら?」にて解説しています。
所得税
所得税とは、名前のとおり所得に対して一定割合払わないといけない税金のことです。
住民税は住んでいる市町村と都道府県に対して納めますが、所得税は国に対して納める税金です。現金収入や株式、不動産など所得の種類や額によって支払い条件が細かく定められています。
※なお所得税の税率は課税所得の5~45%がといったように、課税所得によって税率に開きがあるため、稼いでいるのに手取り額が少ないといったことが起こりがちなため注意が必要です。詳しい所得税の計算式は「フリーターの所得税はいくら?」にて解説しています。
その他
他にかかってくる税金としては、消費税やたばこ税、酒税などが挙げられます。これらはフリーターに限らず、誰しもが払わないといけない税金です。
国民健康保険が払えないフリーターの免除の方法
日本国民であればだれしも健康保険に入らないといけないのですが、保険料が払えない場合はどうしたらよいのでしょうか?
実は、保険料が払えないフリーターに対して、いくつかの支払いが免除できる方法が存在します。
家族の健康保険の扶養に入る
親などの家族が健康保険に入っていて、フリーターの年収が130万円未満で扶養者の年収の半分に満たない場合(別居の場合は仕送り額未満である場合)は、そのフリーターはその家族の被扶養者となることができます。
フリーター自身が払えない場合でも、家族の扶養になることで、被扶養者用の健康保険証が発行されるのです。もし仮に自身で国民健康保険に入った場合、年収額の約10%分の支払いを行わないといけません。よってフリーターの中には年収が130万円を超えないように勤務時間を調整している人もいます。
先ほどフリーターでも健康保険や厚生年金に入ることができる条件の1つが月収88,000円以上と説明しましたが、年収に換算した場合は106万円になります。
よって本来なら年収130万円までは家族の扶養に入ることができるものの、月収が88,000円を超えて他の条件も満たすと、扶養から外れて、自身が加入しなくてはならないという問題が生じることがあります。
国民健康保険の減免制度を利用する
国民健康保険の場合、下記の条件に当てはまる人は支払いが減免されます。
- 国民健康保険の加入家族含めた所得が一定額以下の場合
- 勤め先の企業が倒産した、または解雇された場合
- 災害や事故などにあい、生活を送るのが困難になった場合
上記のうち、所得が一定額以下の場合とはどのような場合を指すのでしょうか?
例えば東京都中央区の場合は国民健康保険の所得割について下記のような軽減制度となっています。(他の市町村もほぼ同じ軽減制度となっています。)
所得基準 | 基礎分保険料 | 後期高齢者支援金分保険料 |
---|---|---|
加入者全員の2017年中の所得金額が33万円以下 | 39,000円
→11,700円 |
12,000円 →3,600円 |
加入者全員の2017年中の所得金額が33万円+(27,5万円×加入者数)以下の世帯 | 39,000円
→19,500円 |
12,000円 →6,000円 |
加入者全員の2017年中の所得金額が33万円+(50万円×加入者数)以下の世帯 | 39,000円
→31,200円 |
12,000円 →9,600円 |
※上記の基礎分保険料の他に、40歳以上になると徴収される介護保険料も所得額に応じて減免されます。上記は減免額の割合からよく「7割・5割・2割軽減」と呼ばれています。
よって1人暮らしのフリーターの場合は、年収を98万円以下に抑えると1番軽減ができますが、1人暮らしで年収98万円以下というのは生活していくことが非常に困難なため、現実的ではない気がします。
国民年金が払えないフリーターの免除の方法
次に国民年金が払えない場合はどのような免除の方法があるのでしょうか?
配偶者の厚生年金の扶養に入る
フリーター自身の配偶者が厚生年金に入っている場合、そのフリーターは国民年金の第3号被保険者となり支払いが免除されます。
収入の条件は健康保険と同じく、フリーターの年収が130万円未満であり扶養者の年収の半分に満たない場合(別居の場合は仕送り額未満である場合)となります。
年金の場合は支払いが免除されるのは「配偶者」のみになりますので注意が必要です。
国民年金の免除・納付猶予制度を利用する
国民年金についても保険料が払えない場合、「保険料免除制度・納付猶予制度」といって、支払いが免除されたり、納付を待ってくれる制度が存在します。
まず免除制度とは、フリーター含めた家族の所得の前年度の所得が一定額以下の場合は、一定割合の支払いが免除される制度のことです。具体的には下記の所得の場合、支払いが一定割合免除されます。
免除額の割合 | 前年所得の条件 |
---|---|
全額 | (扶養親族等の数+1)×35万円+22万円 |
3/4 | 78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
1/2 | 118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
1/4 | 158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
参考:国民年金機構 保険料を納めることが、経済的に難しいとき
1人暮らしのフリーターの場合は、フリーター年収が57万円以下である必要があります。しかしながら免除された場合は、老後に受け取れる年金額も減額となってしまうデメリットもありますので、注意が必要です。
免除額の割合 | 年金の減額割合 |
---|---|
全額 | 年金額の1/2 |
3/4 | 年金額の5/8 |
1/2 | 年金額の6/8 |
1/4 | 年金額の7/8 |
参考:国民年金機構 保険料を納めることが、経済的に難しいとき
次に猶予制度とは、20歳から50歳未満で前年所得が(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円以下で年金が払えない場合、支払いが一定期間猶予される制度のことです。
一方で猶予された期間は受給資格期間としてカウントされるものの、老後に受け取れる年金額が免除条件と同じく減額されてしまいますので注意が必要です。
雇用保険が払えないフリーターの免除の方法
雇用保険の加入条件にあてはまる場合はフリーターであっても加入することになります。雇用保険の加入条件は下記のとおりです。
- 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること
- 1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること
参考:厚生労働省 雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!
よって払いたくない場合は上記の加入条件に合致しないよう、短期のアルバイトを掛け持ちして働くなど工夫する必要があります。
税金が払えないフリーターの免除の方法
次に住民税や所得税が払えないフリーターの場合、どのような免除措置が用意されているのでしょうか?
税金については家族の扶養に入るという概念は存在しないため、扶養に入ることで税金の納付を免除することはできません。しかし所得が一定額以下は非課税となり、結果的に税金の納付が免除となります。
住民税の免除の方法
住民税については前年の年収が100万円以下の場合は、控除額を差し引くと非課税となり、税金の納付が免除となります。
所得税の免除の方法
所得税については年収が103万円以下の人は、控除額を差し引くと非課税となり、税金の納付が免除となります。
社会保険や税金が未納だった場合の影響
先ほどまで社会保険や税金の免除の条件について解説しましたが、このうち国民健康保険と国民年金の納付を免除する場合は、申請が必要となります。
しかしその申請をせずにこれらを払わなかった場合はどのような悪影響が出るのでしょうか?
国民健康保険が未納
障害になった際に受け取れる障害基礎年金や、死亡した際に家族が受け取れる遺族基礎年金が受け取れない場合があります。
参考:国民年金機構 保険料を納めることが、経済的に難しいとき
国民年金が未納
老後に老齢基礎年金を受け取れない場合があります。
参考:国民年金機構 保険料を納めることが、経済的に難しいとき
雇用保険に加入していない
雇用保険に加入した場合は、勤め先の企業を通して給料から保険料が徴収されるため、未納ということにはなりません。ただ加入していなかった場合は、失業した際に一定額もらえる失業手当などがもらえないといった影響が生じます。
税金が未納
所得税は通常給料から天引きされるものの、住民税については自身で払い込みが必要な場合があります。よって住民税を納付を忘れて未納だった場合は、延滞金が発生し、次に督促状が送られ、最終的には滞納処分として資産が差押されます。
※ちなみに延滞金は1ヶ月すぎると7倍ほど延滞率がアップし、延滞すればするほど延滞金がかさんでいくため、よいことはありません。(延滞金の詳細については「フリーターの住民税」をご覧ください。)
結果、給料から未納だった分の税金が徴収されてしまいますので、気をつけましょう。
まとめ
今回はフリーターが国民健康保険や年金、税金が払えない場合の免除制度について見てきました。
健康保険や年金については、まず家族や配偶者の健康保険や厚生年金の扶養者になることができないかを確認することから始めましょう。
もし扶養者になることができなかった場合は、自身で加入し支払いをすることになりますが、もし金銭的に厳しく払えない場合は、年収額によっては減免制度が適用されますので忘れずに申請をしましょう。
税金についても払えない場合、自身の年収額によっては非課税となります。しかしながら何れの免除制度も、年収額が130万円を超えると対象ではなく、自身で保険料や税金を払わないといけません。
よってフリーターの場合、正社員と比べて最終的な手取り額がどれくらいなるのか自身で把握する必要があり、実は正社員よりも金銭管理能力が求められるのです。