フリーターの場合、正社員と比べると年収は低いと言われていますが、どれくらい収入に開きがあるのでしょうか?またフリーターと一口に言っても、時給や労働時間によって収入には差があります。
よって今回はフリーターの平均収入について、正社員の平均収入と比較しながら解説します。
時給別フリーターの年収
まず時給毎のフリーターの年収を調べてみました。
以下はフルタイムの正社員の勤務形態と同じく1日8時間勤務、完全週休2日制とした場合(8時間/日×労働日数22日/月=176時間/月)の、時給別フリーターの年収です。
時給900円の場合は年収190万
- 日給7,200円
- 月給158,400円
- 年収1,900,800円
時給1,000円の場合は年収211万
- 日給8,000円
- 月給176,000円
- 年収2,112,000円
時給1,500円の場合は年収316万
- 日給1,200円
- 月給264,000円
- 年収3,168,000円
時給1,500円でフルタイムで働いた場合は年収300万円を超えてくるものの、一般的にフリーターの場合、年収300万円以上稼ぐためには、高時給で長時間労働しなければいけないことが分かります。
フリーターの平均年収は?
雇用形態別の賃金の調査結果を見てみると、正社員・正職員の平均年収は321万6,000円(年齢41.7歳、勤続 12.8年)であったのに対して、正社員・正職員以外の平均年収は210万8,000円(年齢47.3歳、勤続8.2年)だったそうです。また正社員の収入を100とした場合の正社員以外の賃金格差は65.5だったそうです。
参考:厚生労働省 平成29年賃金構造基本統計調査
この調査結果はフリーターに限定しておらず、契約社員や派遣社員といった雇用形態も含まれているものの、やはり正社員と比べたときの収入格差はあることが分かります。
正社員との生涯平均年収の格差
先ほどの賃金構造基本統計調査では、年齢別の平均年収の比較についても調査しています。
年齢 | 正社員・正職員 | 正社員・正職員以外 | 差額 |
---|---|---|---|
20~24 | 209万8,000円 | 183万7,000円 | 26万1,000円 |
25~29 | 244万3,000円 | 199万6,000円 | 44万7,000円 |
30~34 | 281万円 | 210万6,000円 | 70万6,000円 |
35~39 | 313万円 | 210万5,000円 | 102万5,000円 |
40~44 | 343万1,000円 | 209万6,000円 | 133万5,000円 |
45~49 | 373万7,000円 | 207万円 | 166万7,000円 |
50~54 | 398万9,000円 | 205万2,000円 | 193万7,000円 |
55~59 | 391万5,000円 | 209万9,000円 | 181万6,000円 |
60~64 | 313万円 | 231万5,000円 | 81万5,000円 |
65~69 | 284万8,000円 | 213万9,000円 | 70万1,000円 |
フリーターと正社員の平均収入格差の問題は、20代の若い時だけ焦点を当てるべきものではありません。30代に入ると収入差が開きはじめ、50代に入ると収入差のピークに達します。
正社員の場合、毎年の目標を達成すると大きく昇給するのに対して、フリーターの場合は勤続年数が長かったとしても時給の上がり幅は毎回10円から100円程度と非常に小さいです。
さらに正社員の場合はボーナスが支給されることが多いですが、フリーターの場合はボーナスが支給されないことが多く、さらにボーナスの金額差も大きいことから平均年収の差にもひらきが出てしまうのです。
子育てによって一番支出が多い40代以降で、収入が伸びないとなると生活がままなりません。長時間働くと言っても限りがありますし、体力が持たなかったり、子育てに時間が割かれてしまい長時間働けないということがあります。
また最近だと子育てだけでなく、両親の介護にかかる費用も大きな社会問題になっています。一番費用がかかる40代以降に、20代の時とほぼ同じ収入というのは非常に困りますよね。
さらに正社員の場合は健康保険に入っており、病気やけがにかかったときの保障も国民健康保険と比べると手厚いです。また正社員の場合は厚生年金に入っているため、老後に以下のように国民年金以上の年金をもらえることになります。
- 国民年金の場合…支給額が779,300円/年(平成30年度の満額)
- 厚生年金の平均支給額(老年年金)…1,775,124円/年
参考:国民年金機構 老齢基礎年金受給条件
厚生労働省 平成28年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況(P,8)
※その他にも保険や年金のメリットについても「フリーターの社会保険加入のメリット」にて解説しています。
フリーターの場合、年を経ても収入がほとんど変わらないため、家族や老後のための貯金ができずに生活が困窮することが大きな問題となっています。
中年フリーターの現実
先ほど正社員とフリーターの収入格差が開き始めるのは40代以降であることが分かりました。
それであれば、収入格差が見られない30代まではフリーターでいつづけ、40代以降に正社員に就職すればよいのではないかという人もいるでしょう。
しかし年齢を重ねるほど未経験の職種や業界での正社員への就職は難しくなるという現実があります。
求人の中には応募条件を「35歳まで」としているところもあります。40歳を越えてからの就職活動は、書類を出しても次のステップに進むことができないということが多々あります。履歴書を送っても、40代の就職活動になると9割が書類選考の段階で振り落とされるとも言われています。
またフリーターでの経験を買ってくれるところであればよいですが、正社員として働いたことがないと未経験と見なされるところも多いです。
中年になってから正社員に就職しようとしても、就職できずにフリーターのまま働き続けることになり、さらに就職できないという悪循環に陥ってしまうのです。
年齢を重ねると体力的に長時間働くことが大変になりますが、フリーターの収入は労働時間に依存しますので、たくさん稼ごうと思った場合、長時間労働をせざるをえません。
にも関わらず、同年代の正社員と比べると収入格差が明らかなため、将来のために貯金をしようと思ったらできるだけ早い段階で正社員に就職することをおすすめします。
フリーター女性の現実
日本の場合、フリーターだけに限りませんがまだまだ生涯年収の男女差があります。
男性の正社員・正職員以外の平均年収が252万円であるのに対して、女性の場合は196万8,000円となっています。
参考:厚生労働省 平成29年賃金構造基本統計調査
以前はフリーターであっても女性の場合は結婚して専業主婦になることで、フリーター時代に低収入だったとしても不自由なく暮らしていくことができました。しかし現在日本の労働者全体の収入が減っており、結婚した後も共働きをすることで収入を支えている女性が増えています。
よって女性であったとしても、結婚後も正社員になって働くことを望むケースが増えているのですが、中年フリーターの現実でもお伝えしたように年齢を重ねる分、女性男性関係なく、正社員への就職は難しくなります。
また一度正社員のキャリアがある女性の場合は出産や子育てによって退職をしたとしても、スキルが経験があると見なされて再就職がしやすかったり、パートで働くことになったとしても専門性を活かして高い時給の仕事に就くことができます。
最近だと女性向けの求人サイトも充実してきています。女性向けの求人サイトでは子育て支援策など、女性が仕事を探す際に重視している条件にヒットする求人を特集していたり、女性でも働きやすい自身に合う求人を探すことができます。
また同様に女性向けの転職支援サービスも増えてきており、そういったサービスは担当コンサルタントも女性が就くことが多いです。よって女性ならではの目線で長く働けるワークライフバランスが行き届いた求人を紹介してくれたりします。
よってフリーターで将来の生活に不安がある女性の方は、女性向けの求人サイトや就職支援サービスを効率良く使用して、自分にあった企業への転職をすることをおすすめします。
業界別フリーターの平均年収
正社員でも就く業界によって年収差が出ますが、フリーターにもそのような傾向はあるのでしょうか?
正社員を100とした場合の正社員以外の業種毎の賃金格差の調査結果を見てみると、一番格差が大きい業界は卸売業・小売業で60.1となっています。例えばスーパーやコンビニでのアルバイトがこれに当たります。次は製造業で64.6でした。
反対に格差が小さかった業界は建設業で83.6でした。建設業の正社員・正職員以外の年収は279万7,000円であり、1ヶ月に換算すると、23万3,083円になります。
しかし高年収ということは反対に大変な条件で働くことも意味します。例えば建設業の場合、体力が必要です。座って仕事をすることはほとんどなく重いものを持ち運ぶ必要があります。また屋外での仕事がほとんどのため、体調管理が難しいです。
参考:厚生労働省 平成29年賃金構造基本統計調査
フリーターでも安定的に稼げる仕事はないのでしょうか?ここでは、アルバイトでも高収入を得やすい仕事として「塾講師」と「土木作業員」の平均年収を紹介します。
塾講師の年収
塾講師は賃金構造基本統計調査の「教育・学習支援業」に含まれますが、教育・学習支援業の正社員・正職員以外の年収は260万2,000円でした。1ヶ月に換算すると、21万6,833円になります。
参考:厚生労働省 平成29年賃金構造基本統計調査
なぜ塾講師の年収は高いのでしょうか?それは塾講師の時給が他の業界より高いことが多いからです。一般的に塾講師の時給は入ったばかりでも1,500~2,000円と高時給です。ベテランになると時給3,000円以上のところもあります。
また塾講師の場合は、学校が終わった後に授業をすることになるため、夕方からの勤務となります。よって昼間は別のところで働いて、夕方から塾講師のバイトをするなど掛け持ちがしやすいのもメリットです。
さらに子どもたちが夏休みや冬休みといった長期休暇の際は、必ずといってよいほど夏期講習や冬期講習が組まれます。すると1日ずっと働くことができ、月給も比例して上がります。
また最近は個別指導塾が増えてきていますが、個別指導塾の場合、講師の人数も多く必要とします。するとアルバイトでも他の講師の指導をすることがあり、主任給が別途つくことになります。
また担当生徒の成績を上げた、目標以上の申込みがあったなどで、インセンティブがつくところもあります。
さらにこの業界は、アルバイトから正社員にキャリアアップすることが容易な業界でもあります。アルバイトでも肝心な教える業務に携わっているため、正社員の業務内容を理解・習得しやすいからです。
よってフリーターでの経験を元に正社員になりたい人は塾講師として働くことをおすすめします。
また志望校への合格人数や成績のアップ度合いによって、フリーターであったとしても人気講師になることができます。実力次第にはなりますが、著名講師として映像授業やメディアに出演して稼ぐということもできるでしょう。
塾講師の場合、教材準備やカリキュラム作成にかかった時間は時給に含まれないとしているところが多く、含まれるとしても一律○○円としているところが多いです。よって生徒のためにたくさん働いたのに割に合わずに辞める人もいます。
土木作業員の年収
まず土木工事員とは、道路工事や住宅建設などの土木工事現場で、土砂などの荷物を運んだりといった作業をする人のことです。
土木作業員は賃金構造基本統計調査の「建設業」に含まれますが、建設業の正社員・正職員以外の年収は 279万7,000円でした。1ヶ月に換算すると、23万3,083円になります。
参考:厚生労働省 平成29年賃金構造基本統計調査
この土木作業員の特徴として、「日払いOK」、「週払いOK」としているところが多いということです。かつ「未経験OK」としている現場が多く、「お金に困っているが、未経験でスキルや知識がない。」という方でも取り組める内容になっています。寮が完備されているところもあり、住むところに困るということもありません。
また外で作業するため、夜暗くなる前に仕事を上がることができます。現場によっては仕事が早く終わった際や天候が悪い場合も早上がりできることもあります。
さらにフリーターとして働くだけでなく、資格を取ると正社員に登用されるところもあり、例えば土木施工管理技士を取得して、現場監督になる道もあります。他にもクレーン運転士や測量士の資格などをとり、取った資格を使って食べていくことも可能です。
この土木作業員においては多岐にわたるキャリアプランが用意されています。まずはフリーターとして働く中でどの分野に進もうか自分の適性を知るという選択肢もよいのではないでしょうか。
一方で屋外での業務がほとんどであり、勤務中は立ちっぱなしになることが多いことから体力や体調管理が必要な仕事でもある点で向き不向きがあると言えます。
フリーターの限界収入は?
さて今までの内容を元に、フリーターの限界収入例を算出してみました。
昼間は建設業で時給2,000円で1日8時間働くものとし、夜は塾講師として時給2,000円で1日3時間働くとします。休みは週2日あるとし労働日数は月間22日だとすると、月給は484,000円となります。年収に換算すると、580万8,000円となります。
フリーターで高収入を目指す場合は、やはり高時給の仕事に就く必要があります。また上記の例のように体力が何よりも必要になってきます。
また上記の例のようにいくつかの仕事を掛け持ちすることが必要になってきます。アルバイトの社会保険への加入を避けるために、フリーターの労働時間を制限している企業もあります。その場合は複数アルバイトを掛け持ちして収入アップを目指すことが必要です。※「フリーターでも高額年収を得るには?」でもフリーターでも年収400万円以上得る方法を解説しています。
しかしながら掛け持ちをする際の注意点も存在します。
それは年末調整は1つの勤め先でしか行えないということです。もし自身が扶養控除や配偶者控除を受けている場合は、確定申告をしないと天引きされた所得税が戻ってきません。
またフリーターでも社会保険に加入できる場合がありますが、その際も1つの勤め先でしか加入することができません。さらに企業によっては、就業規則でアルバイトの掛け持ちを不可としているところもあります。
よって採用面接のときに他でも働いている場合は、正直に掛け持ちしていることを伝えましょう。
まとめ
やはりフリーターと正社員とでは年齢を重ねるにつれて年収に差がつくのが現状です。(特に女性の場合、平均年収のひらきがさらに顕著となっています。)
もちろん時給と労働時間数によっては大きく稼げるところもあるものの、フリーターの場合、病気になったり出産などで働くことができないとなると辞めてしまう例が多いのも実情です。
何よりフリーターで長時間労働を強いられるとなると、自分の好きなことに時間を費やすことができません。そうなった場合、フリーターでいることのメリットはなくなってしまうのではないでしょうか。
フリーターでいることのメリットと今回紹介した収入面での不安を照らし合わせてみましょう。そして収入面の不安がメリットを上回る時は、やはり正社員に就職することをおすすめします。